日本コンクリート工学会

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新年を迎えて

芳村学

明けましておめでとうございます。令和になっての最初の年頭にあたり、会員の皆様に新年のご挨拶を申し上げます。

ここ数年「自然災害」が多発しています。一昨年は7月に西日本豪雨があり、中国地方や四国地方で土砂崩れや河川の氾濫が相次ぎ大きな被害が出ました(おかげで、神戸で開かれていたJCI年次大会の三日目午後が中止となったのは記憶に新しいところでしょう)。また、同年9月には台風21号が阪神地方を直撃し、高潮により関西国際空港が浸水したほか大阪を中心として大規模な停電が発生しました。一方、昨年は9月に、関東地方に上陸したものとしては観測史上最強クラスの台風15号により、千葉県を中心に甚大な被害が出ました。また、10月の台風19号でも記録的な大雨により関東地方、甲信地方や東北地方に甚大な被害が出ました。一昨年は西日本、そして昨年は東日本です。こうなると、日本中どこで台風や豪雨による大規模災害が起こってもおかしくありません。コンクリート構造物の「安全性確保」がJCIにとっての最重要課題であることを痛感します。一方同時に、堤防やダムといったコンクリート構造物が災害を大きく軽減したことも事実です。コンクリートがいかに「社会の安全に貢献しているか」を訴えていくことも重要と考えます。

JCIでは、調査、研究、技術の普及と並んで「資格付与」を主要な事業のひとつと位置付けています。コンクリート技士・主任技士の登録者数は2019年度で57,400名に達しました。これだけの数の方々が生コンクリート製造や製品の品質管理あるいは建設分野のさまざまな部署で活躍しており、コンクリートの専門能力を有する技術者としての高い評価を得ています。また、登録者数が13,300名に達したコンクリート診断士の方々も、既存コンクリート構造物の点検、診断、維持管理、補修補強の分野で活躍しています。

本学会の問題のひとつに女性会員が少ないことがあります。会員7,000名のうち女性の比率は3.7%に過ぎません(女性比率が少ないといわれる衆議院議員でも10%あります)。コンクリート技術者には女性に難しい点があるのは確かですが、この比率を上げて、コンクリート分野における女性活躍を推進することは重要な課題です。近年、女性活躍推進のための法律がいくつもできていますが、掲げた目標どおりにはいってないようです。いくら法律ができても、それが「社会の意識」として根付かなければ目標達成は難しいからです。意識の変革を起こすためには、こちらから社会にアピールすることも必要ではないでしょうか。アピールは声を上げる人の数が多いほど効果的です。コンクリートを核とした、あるいはもっと広く建設を核とした、関連団体から成る横断的な女性活躍推進のための「ネットワーク」を作ることが、その第一歩と考えています。

ところで、土木、建築両学会の全国大会は分野が広範にわたり、仲間内で深い話をすることがあまりできないような印象があります。それに対して、JCIの年次大会はコンクリートに特化しており、それに関心のある技術者が集まる機会となっています。いわばコンクリートというテーマで土木、建築、材料の技術者が結びついているといえます。皆様がコンクリート技術者としての「アイデンティティと連帯感」をいままで以上に感じることができる年次大会にしたいと考えています。

以上、本年も皆様のご支援、ご協力を得て、上記を含む諸課題に取り組んでまいる所存でおります。宜しくお願い申し上げます。

公益社団法人日本コンクリート工学会
第28代会長
よしむら・まなぶ
(首都大学東京 名誉教授)

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