“古くて新しい建設材料「ジオポリマー」”の可能性と課題
(TC-155A:建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会)

ジオポリマーは,アルミナシリカ粉末とアルカリ溶液の縮重合反応で生じる固化体の総称で,産業副産物の大量消費,CO2発生量の削減,重金属等の固定などを可能となることから,環境問題解決の有力な手段のひとつとして期待されています。また,高い耐酸性や高温抵抗性を有することから,次世代の高機能建設材料としても関心が高まっています。そこで,ジオポリマーについての見識を高めるために,本委員会が設立されました。

本ページでは,委員会活動とともにジオポリマーの特徴や可能性,課題についてご紹介します。

執筆者:情報コミュニケ—ション委員会 委員
合田寛基 (九州工業大学大学院)
(TC-155A:建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会 幹事)

写真 ジオポリマー製歩車境界ブロック(大分県) img 写真 ジオポリマー製歩車境界ブロック(大分県) img
写真 ジオポリマー製歩車境界ブロック(大分県)

日本屈指の温泉地,別府にある明礬温泉は硫酸泉で有名。当地では,ジオポリマー製歩車境界ブロックを敷設したところがあります。別府明礬橋と別府湾を一望できる高台の傍らで,地元の人々や訪れる観光客の足元を支えています。

 ※「月刊コンクリート技術2016年12月号」にてジオポリマーの紹介がございます。こちらよりぜひご覧ください。

委員会について
ジオポリマーについて
最終報告:「建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会」報告会


委員会について

本委員会では,2015年度より2年間にわたり,一宮一夫委員長(大分工業高等専門学校教授)のもと,委員22名,協力委員8名の組織構成で,ジオポリマーの反応機構や材料特性,製造施工事例などについて調査,検討を行いました。また併せて,文献調査や共通実験なども実施しました。

委員会活動に際し,以下の目標を掲げ,3つのWGを起ち上げました。
1) ジオポリマーや活性フィラーといった用語の定義
2) ジオポリマーの使用材料毎による特性の調査ならびにコンクリートとの違いの整理
3) ジオポリマーの応用分野の整理と普及に必要な資料の作成
4) コスト,課題等の整理とe ラーニング等の活用の検討

  • 反応機構WG
    ジオポリマーの反応機構について,使用材料と反応メカニズムに関する情報,知見の収集
  • 力学特性・耐久性・構造WG
    ジオポリマー固化体の力学特性,耐久性,構造利用などに関する情報収集(文献調査),標準的な配(調)合の例示,eラーニングの試行
  • 製造・施工WG
    ジオポリマー製品の製造ならびに施工事例の調査
左:ジオポリマー練混ぜ実験の様子(三重県) img 右:ジオポリマー製水路擁壁の施工実績調査(佐賀県) img
左:ジオポリマー練混ぜ実験の様子
(三重県)
右:ジオポリマー製水路擁壁の施工実績1)調査
(佐賀県)
写真 WG活動の様子

委員ならびに活動内容の詳細につきましては,委員会ホームページをご覧ください。

なお,会誌「コンクリート工学」2017年2月号に,一宮委員長執筆の解説記事「ジオポリマーの研究開発の現状」2)が掲載されております。ご興味のある方は併せてご覧いただけると幸いです。


ジオポリマーについて

「ジオポリマー」という名称は,1990年代にフランスのDavidovits博士によって命名されました。アルミナやケイ酸を含む非晶質の材料とアルカリが縮重合することで生成されることが特徴です。ジオポリマーと同じような材料として,アルカリ刺激材料があります。

本委員会では,ジオポリマーを『セメントクリンカーを使用せず,非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラー)とアルカリ金属のケイ酸塩,炭酸塩,水酸化物水溶液とを用いて硬化させたもの』と考えております。

下の図のように,ジオポリマーやアルカリ刺激材料に関する研究は,100年余りにわたり世界中の研究者によって熱心に研究されています。その一例として,RILEM(国際材料構造試験機関連合)における2つの研究委員会を挙げます。
RILEM TC 224-AAM : Alkali activated materials (2007-2011)
RILEM TC 247-DTA : Durability testing of alkali-activated materials (2012-2016)

図 ジオポリマー(関連含む)研究の歴史と代表的な研究者 img
図 ジオポリマー(関連含む)研究の歴史と代表的な研究者
※赤字で示した研究者の著書については,九州支部の研究専門委員会「建設材料としてのジオポリマーに関する研究委員会」の成果報告書で取り上げました。

次に,
ジオポリマーの材料
生成方法
反応機構
材料特性
製造と施工事例
ジオポリマーの可能性と課題
について紹介します。

【ジオポリマーの材料】
一般的にジオポリマーの生成には,活性フィラーアルカリシリカ溶液が使用されます。

☆活性フィラー
アルカリ環境下でジオポリマーの生成反応を示すガラス質(非晶質)を含んだ粉体を示します。
 フライアッシュ(FA): 石炭火力発電所で発生する石炭灰
 高炉スラグ微粉末(BFS):溶鉱炉にて銑鉄を製造する際の副産物
フライアッシュ(FA) img
フライアッシュ(FA)
高炉スラグ微粉末(BFS) 写真 活性フィラーの代表例 img
高炉スラグ微粉末(BFS)
写真 活性フィラーの代表例
図 活性フィラーの組成例 img
図 活性フィラーの組成例
☆アルカリシリカ溶液
シリカを含み,高いアルカリ性により活性フィラーを溶解させることのできる溶液を示します。比較的高いpHのケイ酸ナトリウム溶液,アルカリ水酸化溶液などが挙げられます。原料として,水ガラス,苛性ソーダなどが使用されます。
図 アルカリシリカ溶液の例 img
図 アルカリシリカ溶液の例

水ガラスの他にもシリカフューム(SF)※を苛性ソーダなどのアルカリ溶液に混ぜる場合もあります。
 ※シリカフューム(SF):電気炉にて金属シリコンなどを製造する際の副産物

写真 シリカフューム(SF) img
写真 シリカフューム(SF)

【生成方法】
ここでは,ジオポリマーの練混ぜ養生について紹介します。

☆練混ぜ
練混ぜの工程は,一般的なセメントコンクリートと変わりません。活性フィラーと骨材を投入して空練りしてから,アルカリシリカ溶液を投入し,練り混ぜます。材料と配(調)合によっては,増粘剤を添加したセメントコンクリートのように高い粘性を示すことがあります。
写真 ジオポリマーの練混ぜ状況 img
写真 ジオポリマーの練混ぜ状況
☆養生
ジオポリマーの養生では,セメントコンクリート二次製品のように加温する場合と常温で静置する場合があります。縮重合反応を示すジオポリマーにとって,加温は重要であることから,60〜80℃で数時間静置させて反応を促進させることが多いです。
図 ジオポリマーの加温養生例 img
図 ジオポリマーの加温養生例

【反応機構】
ジオポリマーは使用する活性フィラーやアルカリシリカ溶液によって,複数の反応が並行して起きると考えられています。現時点では反応機構のすべてが解明されている訳ではありませんが,活性フィラーの種類に応じて,次の図のような反応が進んでいると考えられています。

図 FA系,BFS系の反応機構イメージ img
図 FA系,BFS系の反応機構イメージ

【材料特性】
ジオポリマーは,セメントコンクリートと比較するとカルシウム(Ca)の量が少ない特徴を持っています。
このため,
 ・酸や硫酸塩に対する抵抗性が高い
 ・耐火性に優れている
 ・アルカリシリカ反応を起こしにくい
といった特長が期待されています。

一方で,縮重合反応時に起きる脱水現象等によって,組織がポーラスになることもあります。
 このため,
 ・透水係数,透気係数が大きい
 ・塩化物イオン,炭酸イオンなどが侵入しやすい
といった傾向が考えられています。

現在,多くの研究者によって,使用材料や製造方法が材料特性に及ぼす影響について評価が試みられています。こういった取組みを継続することで,次世代の社会を支える建設材料として,「ジオポリマー」という選択肢が増えることに期待しています。

【製造と施工事例】
現在,ジオポリマーに関する基礎研究が盛んに行われておりますが,すでに国内外で建設材料としてジオポリマーが適用され始めています。今後,さらに多くの場所で,ジオポリマーが用いられるようになるかもしれません。
 ・国内事例:まくらぎ,外溝ブロック,U字溝,歩車境界ブロック
 ・海外事例:空港駐機場舗装

写真 国内におけるジオポリマー製品事例 img
写真 国内におけるジオポリマー製品事例
写真 海外におけるジオポリマー施工事例(オーストラリア) img
写真 海外におけるジオポリマー施工事例(オーストラリア)
※約40,000m3のジオポリマーコンクリートが施工されました。

【ジオポリマーの可能性と課題】
ジオポリマーは,セメントコンクリートをはじめとするこれまでのコンクリートとともに,我々の暮らしを支える様々な用途が期待されています。たとえば,酸性の温泉地域での下水管,耐火性が期待されるトンネル覆工部などが挙げられます。さらに,天然資源の枯渇が憂慮されつつある中で,より多岐にわたる骨材の活用が期待されることや,産業副産物の有効利用に貢献できることは,持続可能な社会を構築する上で有益であると考えられます。

今後は,材料コストの低減,安定した品質を得るための製造技術,長期特性を推定するためのデータ取得ならびにその評価,規準類の制定,普及に向けたPR活動などが重要になると考えられます。


最終報告:「建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会」報告会

本委員会では,2016年6月に中間報告として,「建設材料としてのジオポリマーに関する現状と課題」シンポジウムを開催しました。さらに,本委員会の活動の集大成として,下記の通り最終報告となる報告会を開催予定です。

  • 最終報告:「建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会」報告会
    ・日時:
    2017年9月29日(金) 10:00〜16:30
    ・場所:
    品川区立総合区民会館 きゅりあん 小ホール
    (東京都品川区東大井5-18-1)
    ・プログラム(予定):
    第1部 WG成果報告
    第2部 研究発表会
    第3部 特別講演会(Prof. J.Davidovits (予定))
    ※報告会内容は,変更されることがあります。
☆Prof. J.Davidovits (ダビドビツ教授)について
「ジオポリマー」という名称の名付け親であり,ジオポリマー研究界の第一人者です。
Professor of the Institute for Applied Archaeological Sciences, IAPAS, Barry Univ. (U.S.A)(バリー大学教授)等を経て,現在,President of the Geopolymer Institute (ジオポリマー研究所所長)として,ジオポリマーの普及に努めておられます。
※the Geopolymer Institute HPは,こちらです(英語)。

詳細については,会誌「コンクリート工学」ならびに,JCIホームページのイベント情報等で2017年7月以降に告知いたします。

  • 中間報告:「建設材料としてのジオポリマーに関する現状と課題」シンポジウム
    ・日時:
    2016年6月24日(金)
    ・場所:
    日本コンクリート工学会 会議室

このシンポジウムでは,ジオポリマーの概説とともに委員会でのWG活動について紹介がありました。さらに,計10件の論文発表が行われました。当日の参加者は100名を超え,大変盛況なシンポジウムとなりました。

図 シンポジウム冊子(表紙) img 図 シンポジウムの様子 img
図 シンポジウム冊子(表紙)とシンポジウムの様子
☆画像をクリックするとシンポジウム目次(PDF)が開きます

 ※シンポジウム冊子「「建設分野におけるジオポリマー技術の現状と課題」に関するシンポジウム 委員会中間報告 論文集」の価格や在庫については,こちらをご覧ください。


[参考文献]
1)甲本達也ほか:フライアッシュ・ベース・ジオポリマーを用いた水路斜面保護擁壁の設計・施工例,地盤環境および防災における地域資源の活用に関するシンポジウム,地盤工学会九州支部,pp.49-54,2010
2)一宮一夫:ジオポリマーの研究開発の現状,コンクリート工学,Vol.55,No.2,pp.131-137,2017.2

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