コンクリートは、社会基盤整備の主要材料として、重要な役割を果たしてきました。レスター・ブラウンの著書によれば、現在世界で年間260億トンのマテリアルが使われており、そのうちの200億トンが石・砂利・砂であり、10億トンが鉄鋼生産用です。これらの多くが建設資材であると考えられます。
日本の建設投資はピーク時の80兆円強から50兆円程度に急激に落ち込み、今後も基本的な基調は変わらないと予想されています。これは、インドや中国のような人口大国がすさまじい勢いで社会資本整備を進めているのと対照的です。
しかしながら、日本でこの半世紀に蓄積されてきた社会基盤は膨大な量になり、維持管理投資や更新投資は継続的に行う必要があります。どのような展開になっても、今後もコンクリートは重要な建設資材として使用され続けることは間違いありません。
地球環境問題が人類の最大の課題になりつつあります。コンクリートに使われる資源について言えば、セメント製造における CO 2 の排出及び骨材の枯渇などの問題がある一方で、各種産業副産物の混和材としての利用や、セメント製造における各種廃棄物の原料あるいは燃料としての利用など、環境負荷低減にも貢献しています。そこで、本セミナーでは、先ずコンクリートの主要材料であるセメント、骨材、混和材の「環境」側面の現状について概観することにしました。
コンクリート技術は、 AE 効果の発見、レディーミックストコンクリートの一般化、各種混和材の利用、高性能 AE 減水剤の開発、高強度コンクリートや自己充填コンクリートの開発等、着実に進化してきたと言えます。新しい技術は、それらが一般化するまでに時間がかかりますが、この度 JIS A 5308 (レディーミックストコンクリート)に「高強度コンクリート」が新たに規定されました。高強度コンクリートの JIS 化は、生コンの「品質」における歴史的エポックと思われますので、これらに関する今後を展望することにしました。
わが国最初のレディーミックストコンクリート工場が1949年にできて半世紀以上が経ちました。コンクリートの需要増大とともに生コン工場は増えましたが、現在は建設投資の急激な落ち込みにより将来展望ができない迷走状態にあるといえます。しかし、社会環境の急激な変化の中で生き延びるには、業態を含む根本的な変革が必要と思われますので、最後に生コン業界が「元気」になる方策を探ることにしました。
本企画にご理解いただき、セミナーの講師をお引き受けいただいた方々に深甚の感謝を申し上げます。 |