四国コンクリート研究会総会挨拶(H15 6/5

 

四国コンクリート研究会の新会長として一言ご挨拶申し上げます。

 

四国コンクリート研究会は、今から4年前の平成11年に設立され、初代会長に高知工科大学の岡村先生、そしてこの2年間は徳島大学の水口先生が会長を務められました。先ず、両先生のこれまでのご尽力と、水口会長の下で幹事長を務められました徳島大学の橋本先生、そしてこの4年間本研究会の活動にご協力頂いた多くの方々に心より感謝申し上げたいと思います。

 

さて、この研究会の設立総会の際、私は、この研究会は、コンクリートに係わる技術者が四国という地域に貢献するために設立するのであり、そのために、基本コンセプトとして、自ら考え、自ら仕掛け、自ら勝ち取ることをモットーとしたい、もし一部の人間の単なるサロンになったら、即刻解散しよう、と設立総会としてははなはだ不穏当な挨拶をいたしました。

 

あれから、4年が過ぎました。この間、以下の研究委員会による活動がありました。

 

@    自己充填コンクリートの活用によるコンクリート工事の合理化に関する研究委員会(大内先生)

A    四国の骨材資源に関する研究委員会(氏家先生)

B    四国の生コンに関する研究委員会(堺)

C    ライフサイクルを考慮したコンクリート構造物の維持管理に関する研究委員会(水口先生)

D    コンクリートの廃材の有効利用に関する研究委員会(中田先生)

E    自己充填コンクリート製造技術者資格認定制度検討委員会(大内先生)

F    四国地区のコンクリート構造物の非破壊検査・調査に関する研究委員会(橋本先生)

 

活動に若干の濃淡はありますが、多くは貴重な報告書が刊行されています。手前みそになりますが、四国の生コンに関する研究委員会活動の成果として、香川県生コンクリート工業組合が念願の試験場を来年度に設立することになりましたことは、この委員会の委員長を務めた私としては大変嬉しく思っています。

 

この他の活動として、5回の現場見学会。また、延べ参加人数で800名を超える5回の講習会を実施してきました。さらには、高知高専の横井先生のご尽力により、本研究会の活動状況を照会するホームページが開設され、これまで3200を越えるアクセスがありました。

 

このように、この4年間着実な活動が行われてまいりましたが、四国コンクリート研究会が設立された最大の効果は、この研究会を通して産官学の交流による目に見えないネットワークが形成されたことではないかと考えています。

 

さて、改めて述べるまでもなく、建設業界は未曾有の困難に直面しています。約10年前の1992年には民間及び公共事業をあわせて80兆円を超える建設投資がありましたが、現在50兆円程度に落ち込んでおり、今後20年間でその6割に当たる30兆円になると予測されています。これは、大変なことです。ローマ人の物語を書いている作家の塩野七生さんは、人間はみたいものしかみない、つまり、みたくないものはみない、という人間の性癖を見事に言い当てています。われわれは、建設業界のこの現状と将来をできれば見たくないところですが、恐らくしっかりと見なければならない最後の機会ではないかと思います。

 

インフラの成熟ということでは最も先行しているイギリスの建設業界が1999年に、10年後、つまり2010年の建設展望(UK Construction 2010)に関するレポートを出していますが、その中で衝撃的な表現がありましたので、紹介したいと思います。

  “Major new roads and structures have become an endangered species, although urban development, from bypasses to new integrated transport hubs, is expected to be a source of continuing or even increased demand”

 

日本でも、現在、都市再生が大きな課題としてクローズアップされています。このことは、今後の建設投資は地方でより多く落ち込むことを意味しています。そこで、四国はどうする、ということになります。昨日の日経によりますと、この間東北地方に発生した地震被害を踏まえて、JRが3万本以上の新幹線橋脚の耐震補強を行うことを発表したようです。事業費で数百億になりますが、四国には対象となる新幹線はありません。つまり、大規模なインフラそのものが余りない状況です。

 

これが現実です。先日、四国の建設業界の重鎮の一人にお話を伺いましたところ、このような状況にあって業界自らが自分たちの将来について戦略を練るようなことを全く行っていない、ということでした。大変驚きましたが、四国にほんとうにこれ以上の建設投資は必要ないのか、ということを我々自身が考えなければならないと思います。それぞれの立場で、知恵を出し、それらを統合し、四国の価値を高めるための新しいコンセプトでのインフラ整備に然るべきアクションを起こさなければならないと考えます。容易なことではありませんが、座して死を待つか、新たな展開にチャレンジするかの2つに一つだと思います。

 

生意気なことを申し上げましたが、大学で将来の土木技術者を養成している者の立場としての心からの叫びでもあります。ローマ時代は1000年続きました。日本の建設業界は、既にローマ後の中世に入ってしまったのでしょうか。そうであれば、われわれは静かに退場しなければならないと思います。しかし、私は、現状で十分だとは全く思っていません。ある意味では、かなり原始的なインフラ及びそのシステムが、環境破壊促進に貢献していると考えています。目先の利益あるいは財政状況に拘泥されるのではなく、環境コストと地方の価値を明確にした建設投資を考えることに、私としては一条の光を見出したいと思います。要は、新しい価値観をどう醸成し、それらをどう具体化するかだと思います。

 

四国コンクリート研究会が、そのような意味においても四国に貢献できるよう、この2年間全力を尽くしたいと思います。最後に、四国コンクリート研究会の価値ある活動のための皆様のご協力をお願いいたしまして、新会長としての挨拶と致します。どうも有り難うございました。