性能規定に基づくASR制御型設計・
維持管理シナリオに関する研究委員会

JCI-TC152A
 
委員会設立主旨

 アルカリ骨材反応(ASR)に対しては,これまで必ずしも十分でない試験,評価手法をもとに,設計上は劣化が生じないとする「抑制」型の設計が行われてきた。しかし,ASRの発生は未だに報告され,維持管理のフェーズで事後維持管理とならざるを得ない状況から,対策の難しさを生み出していた。本研究委員会では,供用環境や岩石学的特徴に配慮した適切な試験法に基づくASR膨張予測を試み,構造性能を含めた要求性能と構造物の重要度に応じたASR「制御」型の設計および維持管理の連係シナリオの確立を目的とする。
 本研究委員会では,既存のASR関連規準の改正とともに,岩石学的ASR診断手法および「ASR診断の現状とあるべき姿研究委員会(TC115FS,2011-2013)」で有用性を見出したコンクリートプリズム試験(CPT)の共通試験に基づく試験方法の一般化を図る。また,膨張予測を基にした,効果的な対策のあり方,ならびに構造性能も含む要求性能に応じたASR「設計」の可能性を探る。


 
 
活動計画

 本研究委員会では,以下の3つのWGを構成し,活動を行っていく予定としている。また,国内のみならず世界的に地域的特色の強いASR劣化機構に対して,RILEMやASTMの関連TCとの情報交換も試み,日本のASR研究の発信を行う。
 WG1:試験・予測法WG
 AAR-3およびDD2の改正を規準関連委員会に諮る。改正原案作成に絡めてRILEM AAR-4,CPT法やアルカリラッピングを用いた残存膨張予測試験法など,膨張可能性の評価のみならず,膨張予測を見据えたASR膨張モデリングの可能性を探る。特に前委員会(TC-115FS)で提案されたCPT法の信頼性および精度の向上とともに,加速倍率や環境依存性の定量化を考える。
 WG2:診断・対策WG
 構造物の重要性と要求性能を考慮したASR制御および補修対策の検討を行う。現状のASR劣化状態だけでなく,WG1の予測可能性が生まれた場合の対策のあり方を考える。いくつかのSWGを想定し,補修などの対策の効果も含めた地域ごとの実態調査,構造物ごとのリスク評価と対策などについて検討する。
 WG3:性能評価WG
 ASRが発生あるいは進行した場合の部材および構造物の性能評価手法を整理する。また,WG1の予測可能性が生まれた場合の性能予測について検討する。一方,要求性能や維持管理限界側から見た,部材あるいは構造物の耐久性上の限界状態(外観上のグレードなど)を見出すことを試みる。
 全体委員会を4〜5回/年,各WGを適宜開催し,2年間の活動終了時に報告書を作成する。作成した報告書をもとに成果報告会を開催する。なお,地域的特色の強いASR劣化機構の特徴から,報告会はいくつかの地方開催も視野に入れる。


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