性能評価型耐震設計に用いる
コンクリート構造物の
非線形モデル研究委員会

JCI-TC204A
 
委員会設立主旨

 近年米国では、非線形解析を前提とする既存建物の耐震性能評価法ASCE-41、非線形時刻歴応答解析による新築建物の耐震設計法や技術審査の方法を定めたTBIガイドライン、新工法の設計基準の妥当性を検証する手法を定義したFEMA P-695、レジリアンスに基づく統一的耐震性能評価手法を定めたFEMA P-58など、標準化された耐震性能の定義と、それに基づく性能評価を耐震設計の基本とする方向性が明確に打ち出されてきた。これらの評価法では、構造物にとって極限状態となる、想定される過去最大レベルの地震動(レベル3地震動)に対する応答を評価対象としている。また、その際には、柱、梁、耐震壁、柱梁接合部などの強度、変形性能、履歴特性に加え、倒壊に至る挙動に関する「標準的な非線形モデル」の使用が前提とされている。
 一方、日本では性能評価制度のもと、非線形地震応答解析による耐震設計が幅広く実施されてきている。ただし、個別モデルの開発は進んでいるものの、米国のようなレベル3地震動による倒壊現象までを含むモデルを用いた評価手法の実用化は遅れている。また、建築の場合、個々の設計の内容は非公開とされており、耐震性能評価用の「標準的な非線形モデル」の確立も大きく遅れている。この状況から、モデルの妥当性に関する議論は避けられる傾向にあり、性能評価型で設計された構造物の設計者の説明責任の取り方が不明確で、技術倫理の確立が立ち遅れているのが現状である。高度な構造設計技術が今後も発展しながら、かつ、実用に供され社会に信頼されるものとして貢献できるためには、人為的ミスや利益相反の問題をクリヤされたことを示す、技術の利用方法の指針が確立され、社会の信頼性を得ることが必要とされている。
 そこで、本研究委員会では、建築構造ならびに土木構造における、鉄筋コンクリート構造の非線形地震応答のための構造部材と架構のモデルを対象として、我が国を含む世界でのこれまでのガイドライン・発表論文・報告書・オープンソースソフトウェア・市販の解析ソフトウェア・一貫設計プログラムに基づき、モデル化、設計用クライテリア、適用範囲、解析結果の有効性や信頼性、利用上のルール・留意事項などについてまとめるものである。また、最新の研究と実務の動向を調査して、代表的な設計用モデルの精度評価による比較を行う。本委員会は、耐震設計の実務と将来の研究の方向性について示唆を与えるものとする。さらに、米国のACIにおける関係委員会(ACI369委員会、ACI374委員会等)との国際的な情報交換も行い、日米の耐震設計やルールの知見を相補い、さらなる高度化を図るとともに、日米共同作業に携わる若手の研究者の真の国際化と活性化につなげる。


 
 
活動計画

 建築構造ならびに土木構造における、鉄筋コンクリート構造の非線形地震応答のための構造部材と架構のモデルを対象として、主に以下の4点に関する活動を行う。

  1. 我が国を含む世界でのこれまでの発表論文・報告書・オープンソースソフトウェア・市販の解析ソフトウェア・一貫設計プログラムの調査研究による現状分析を行う。
  2. 設計に用いられるときの、代表的なモデル化・標準的なモデルパラメータとその設定ルールおよびそれに対応する設計用クライテリアの組の分類の比較分析を行う。
  3. さらに、2. の解析モデルの利用上の適用範囲とする構造種別・形態・応力状態・材料・寸法・配筋詳細等の範囲に関する調査分析を行う。
  4. 倒壊までを対象とする構造部材のモデルとそれらのモデルを含む架構のモデル化に関する研究動向を調査し、ACIをはじめとした世界各国における性能評価型耐震設計に用いるコンクリート構造の非線形モデルに関する情報収集を行う。

 これらの調査は、本委員会の最終成果は、「性能評価型耐震設計におけるコンクリート構造物の非線形モデルの適用法と審査のためのガイドライン」に関する報告書(仮称)として報告する。
 本委員会の最終成果は、「性能評価型耐震設計におけるコンクリート構造物の非線形モデルの適用法と審査のためのガイドライン」に関する報告書(仮称)として報告する。


(c)性能評価型耐震設計に用いるコンクリート構造物の非線形モデル研究委員会