コンクリートセクターにおける
地球温暖化物質・廃棄物の最小化に関する
研究委員会

JCI-TC081A
 
委員会設立主旨

地球温暖化問題は、世界の政治課題としてその解決に向けた様々な動きが急である。2008年に開催されるG8北海道洞爺湖サミットの中心課題は、ポスト京都議定書の枠組みの構築となる。全ての産業は、今後その生産活動に伴う地球温暖化ガスの一層の削減を図ることが求められることは明らかである。コンクリートセクターでは、膨大な資源・エネルギーが消費されている.世界のセメント生産は20億トン、コンクリート生産は100億トンにも上る。施工や輸送に関わるエネルギーも少なくない。将来、これらが数倍に膨れあがることが予測されている。地球に最も潤沢に存在する資源から製造されるコンクリートに代わる建設資材は存在しないことから、今後、コンクリートセクターはコンクリートの利用及びその解体等におけるドラスティックな環境負荷低減を図る必要に迫られることになると思われる。
本研究委員会では、このような状況を考慮し、コンクリートセクターとしての地球温暖化物質と廃棄物の最小化による環境負荷低減についてあらゆる観点から検討する。すなわち、本研究委員会は、H19年度に終了したJCI-TC-055FS「コンクリート構造物の環境性能に関する研究委員会」の発展的活動であり、コンクリートセクターから排出される地球温暖化物質と廃棄物を最小化するための要素技術・総合技術システム・社会制度等を提案することを目指す。また、本研究委員会では、ポスト京都議定書を見据え、現在国際的に議論されている2020年及び2050年までの温暖化ガス削減におけるコンクリートセクターの具体的貢献の可能性について検討する。つまり、想定される削減量を実現するための現状技術とその発展形におけるあらゆる可能性を探ると共に、技術のイノベーションの方向を明確にする.なお、本研究調査は、日本が幹事国として進める予定のコンクリートに関わる環境規格作成のためのISO/TC71/SC8の活動にも寄与する。また、本研究委員会はJCIが共催するfib 2009 London Symposiumの対応窓口となる。


 
 
活動計画

本研究委員会の設置の趣旨・目的に対応して以下の5つのWGを設置し、調査研究活動を進める。

WG1:物質フロー(主査:野口貴文)
WG2:インベントリデータ (主査:大脇英司)
WG3:ポートフォリオ(主査:河合研至)
WG4:社会システム(主査:小山明男)
WG5:fibロンドンシンポジウムおよびISO/TC71/SC8対応(主査:堺孝司)

各WGの活動計画は以下の通りである。
WG1では、コンクリートおよびコンクリート構造物に関わる材料および廃棄物の流れを関連業界ごとに調査し、我が国のコンクリートに関わる物質フローの全体像を明らかにする。調査対象となる材料および廃棄物は、コンクリート構造物の建設に用いられる主要な材料(セメント、骨材、混和材、化学混和剤、コンクリート、鉄筋、型枠など)とコンクリートの製造過程およびコンクリート構造物の建設・解体過程で発生する主要な副産物・廃棄物(洗浄水、戻りコンクリート、解体コンクリート塊、鉄筋、型枠など)であり、コンクリートおよびコンクリート構造物に関連する日本全体の物質フロー図を作成するだけでなく、地域ごとの物質フロー図も作成し、コンクリート関連産業全体でCO2排出量および廃棄物発生量を最小化するための基礎資料を提示するとともに、日本全体および各地域の物質バランスの現状と将来の方向性について考察する。
WG2では、インペントリーデータ作成のための環境負荷量に関するデータの取得方法、および得られたデータからインペントリーデータを算出するための手順を検討し、提案する。あわせて、所定の手順で算出したインベントリーデータの利用方法についても整理し、提案を行う。このため、以下のように進めることを予定している。

  • 現在、利用されているインベントリーデータの収集。
  • 収集したインベントリーデータの算出方法の調査。
  • インペントリーデータの算出に有用な統計量の収集。
  • 各発生者の分担する範囲について、発生者負担、受益者負担等の考え方を参考にした分担の方法の検討。
  • 統計量の採録方法の相違を踏まえたインベントリーの試算。
  • 国内外の平均的インベントリーと、地域や個別事業者が公表するデータに基づくインベントリーの比較による変動程度の把握。
  • その他、算出方法の相違によるインペントリーデータへの影響程度の把握。
  • これらを考慮したインペントリーデータの算出方法の提案。
  • 提案する算出方法の特徴を理解した利用方法の提示。

WG3では、コンクリートセクターとして地球温暖化物質と廃棄物を最小化するための要素技術およびその組合せ、最適化について検討を行う。コンクリートをライフサイクルで考えた場合に、地球温暖化物質や廃棄物の低減を図るための技術が各ステージにおいて実施されている、これらの各ステージにおける要素技術を組み合わせることによって、どこまで地球温暖化物質と廃棄物の最小化を図ることが可能かを追求するとともに、例えば、2020年までに1990年比で温室効果ガス排出量を20%削減、2050年までに50%削減といった環境負荷抵減の目標値を掲げ、将来に向けてのシナリオを設定して、それを達成するための地球温暖化物質と廃棄物の最小化の方向性を検討する。これらの達成が現状では困難と判断される場合には、いかなる要素技術の開発あるいは施策の実施によって達成が見込めるかもあわせて検討する.施策の検討はWG4と関わる問題でもあり、この点においてWG4との連携も必要に応じて行う。なお、WG3の活動対象として、地球温暖化物質や廃棄物の最小化(最適化)ツールの開発検討も視野には入れるが、本調査研究期間の範囲内においてツールの開発までを終了することは事実上困難であり、ツール開発に当たって必要となる項目の洗い出し、条件設定の考え方など、事前検討事項の整備が主たる検討内容となるものと考える。
WG4では、社会科学的な側面(経済活動の持続性や文化面への配慮など)を考慮した上で、地球温暖化物質と廃棄物を最少化するために必要なコンクリートセクターとしての方向性や施策について検討する。地球環境問題は、複雑な形態を有する社会・経済活動に相互に関連しており、また環境負荷の最小化と経済活動の発展・維持とがトレードオフの関係にあることが多いことから、さまざまな面から今後のコンクリートセクターのあり方を考えていく。検討内容および手順については以下のように進めることを予定している。

  • 我が国における現・社会制度の調査およびその効果の検証
  • 諸外国における社会制度の調査およびその効果の検証
  • コンクリートセクターにおける環境負荷と経済活動の相互関係の整理
  • 資源、地球温暖化、人間活動等に関する将来予測(現・マクロデータを利用)
  • 新らたな社会制度や施策の導入による効果の検討
  • 新たな社会制度や施策の提案

WG4の最終的な成果は、各WGの検討結果にも依存し、WG1・WG2から得られる結果、すなわち具体的なマテリアルフローやインベントリーデータを用いることで、WG4で提案する社会制度を導入した場合の効果は定量的に示すことが可能となる。また、WG3で設定される将来に向けてのシナリオに対しては、それを達成するための社会制度や施策を提案する形となる。なお、提案する制度・施策には全体的な方向性を示すものと、個別の環境負荷低減要素技術やシステムの普及に資するものなどが考えられる。
WG5では、2009年6月開催fib London Symposiumのfib-JCI特別セッションの設計・運営について検討すると共に、他WGの活動成果に基づいてISO/TC71/SC8規格作成に向けた情報の整理を行う。なお、このWGは、委員長・幹事で構成する。

 

 


(c)コンクリートセクターにおける地球温暖化物質・廃棄物の最小化に関する研究委員会