生活と産業の社会基盤は、多くの構造物がコンクリートで作られています。道路、鉄道、港湾などの産業設備、上水道や下水道などの生活基盤、住宅やオフイス等の建物など、コンクリート構造物は現場打ちでも工場で作られたプレキャストコンクリート製品でも、外観は大きくは変わらないので、プレキャストコンクリート製品の存在は目立たないようです。
日本全国の何処でも今日のように生コン工場でコンクリートを練混ぜ、アジテータトラックで運搬し、コンクリートポンプで打ち込むのが普通のことになったのは、約50年前の東京オリンピックの頃からです。一方、鉄筋コンクリート管が遠心力成形によって工場生産されるようになったのは、大正末期から昭和初期のことですから、コンクリート製品は90年の歴史があります。
今回はコンクリート製品の特長と様々な製品を紹介してみたいと思います。
物づくりの進歩は、手作業から機械化へ、現場製造から工場生産のプレハブ化・プレキャスト化が歴史の流れですから、コンクリート構造物の構築もこの方向で発展するでしょう。このような製造方式の変化は人為的な品質変動を抑え、高性能化と経済性が達成されることになります。
(1)同一形状部材の大量生産(工業製品化)
構造物の構築で同一形状の部材を大量に必要とする場合、工業製品化する方が、高品質の部材を経済的に製造することができます。道路側溝、地先・境界ブロック、電気・通信用ポール、杭、上下水道の管路など、多数の規格化された製品があります。
(2)製品購入が経済的
コンクリート工が主体でない土工とアスファルト工の道路建設などでは、舗装ブロック、側溝、歩車道境界ブロックなどのコンクリート製品を利用しています。自前で施工するよりも製品として購入するほうが効率的、経済的です。また、RCD(Roller Compacted Concrete Dam)工法のダムにおける監査路の構築は、アーチカルバート等の製品を利用する方が効率的iです。農業の潅漑用製品や漁業の魚礁類もこれにあたります。
![]() アスファルト舗装における境界ブロック |
![]() 道路用側溝施工の例 |
![]() ダム監査廊の例(富山県 宇奈月ダム)ii |
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(3)施工システムとしての製品
コンクリート製品が施工システムの一部として位置付けられ、その製品がなければ成り立たない工法等があります。例えば下水道等の推進管、都市トンネル等のシールドセグメント、インターロッキングブロック舗装、盛土のアーチカルバートなど構造物構築の工法として、プレキャストコンクリート製品を前提としたものです。
(4)モジュール化による施工性
建設現場によって工期、騒音、振動、搬入路、美観など様々な厳しい施工条件が課せられ現場におけるコンクリート施工は、リスクを伴うとともに高コストとなる傾向にあります。構造物を適切なコンクリート部材(製品)にモジュール化し、建設現場で組立て、設置することによって、構造信頼性、経済性を高めることができます。供用中の軌道の下に道路を作るためのボックスカルバート、狭い路地などに水槽を設置する潜函式防火水槽、プレキャスト部材の自重を利用した施工事例を下記に挙げます。



(5)施工の制約条件の解決
![]() |
![]() |
![]() 生コンクリートが供給困難な山中にコンクリート製品を設置した例 |
コンクリート製品の本質的優位性に加えて、構造物施工のプレキャスト化に寄与する特徴として次の事柄が挙げられます。v
①天候の影響がほとんどない
③熟練工による一定配合の繰返し製造![]() テーブルバイブレーター |
![]() 型枠に取り付けたバイブレーター |
⑥品質管理体制
②建設現場における品質管理、工程管理を大幅に軽減(1)コンクリート製品の製造
コンクリート製品製造方法には、振動締固め(流込み)方式、即時脱型方式、遠心力成形(方式)などがありますが、ここでは一般的な振動締固め(流込み)方式で鉄筋コンクリート製品を製造するプロセスを説明します。
①鉄筋組立および型枠への配置
②型枠組立
③コンクリート材料の計量・練混ぜ
④製品の成形
⑤蒸気養生
⑥脱型
⑧保管コンクリート製品は(1)成形方法の種類、(2)構造別の種類、(3)用途別の種類の3つに分類されます。成形方法は主に、①振動締固め(棒状振動機、振動台、型枠振動機)、②加圧締固め、③振動・加圧締固め(即時脱型)、④遠心力締固め、⑤ロール転圧締固め、⑥その他の成形方法があります。構造別には①無筋コンクリート(URC)、②鉄筋コンクリート(RC)、③プレストレストコンクリート(PC)に分けられます。下記に3つの分類方法による一覧表を示します。
| 成形方法 | 用途分類 | 設計区分(構造別) | |||
| 無筋コンクリート(URC) | 鉄筋コンクリート(RC) | プレストレストコンクリート(PC) | |||
| 振動・加圧締固め | のり(法)面被覆ブロック類 | 張ブロック(小型) 連節ブロック ブロックマット |
張ブロック(大型) | ||
| 舗装ブロック | 平板 インターロッキングブロック |
視覚障害者誘導用ブロック | |||
| 建築 | 空洞ブロック | ||||
| 暗きょ類 | 鉄筋コンクリート管 | ||||
| マンホール類 | 組立マンホール | ||||
| 路面排水側溝類 | 上ぶた式U形側溝 | ||||
| 擁壁類 | ブロック式(分割式) | 積みブロック | |||
| 加圧締固め | 擁壁類(壁体式) | 鉄筋コンクリート矢板 | |||
| 振動締固め | 暗きょ類 | 無筋コンクリート管 | 組合せ暗きょブロック 鉄筋コンクリートボックスカルバート アーチカルバート 組立式アーチカルバート シールド用セグメント |
プレストレストコンクリートボックスカルバート | |
| 境界ブロック | 境界ブロック | ||||
| 路面排水側溝類 | L形側溝 | L形側溝 U形側溝 |
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| 上ぶた式U形側溝 落ちふた式U形側溝 皿型側溝 排水性舗装用側溝縦断管 縦断こう配可変形側溝 浸透透水性側溝 |
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| 擁壁類 | ブロック式 (分割式) |
積みブロック | 大型積みブロック | ||
| 大型積みブロック | 組立土留め、井げた組擁壁、補強土壁 | ||||
| 壁体式 (一体式) |
L形擁壁、逆T擁壁、控え壁式擁壁 | プレストレストコンクリート矢板 PC壁体 |
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| マンホール類 | マンホール側塊 組立マンホール 電気通信用マンホール 地下埋設物用マンホール |
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| 用排水路類 | 矢板 フリューム、ベンチフリューム 組立土留め L形水路 組立さく(柵)きょ |
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| 貯水施設類 | 雨水貯留施設 防火水槽 農業用貯水槽 耐震性貯水槽 |
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| 防災施設類 | ロックシェッド スノーシェッド スノーシェルタ |
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| のり(法)面被覆ブロック類 | 張ブロック(小型) 連節ブロック のり枠ブロック |
張ブロック(大型) のり枠ブロック |
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| 緑化ブロック類 | 植栽コンクリート(緑化ブロック) | ||||
| 橋梁類 | 道路橋用橋げた 道路橋橋げた用セグメント 合成床版用プレキャスト板 道路橋用プレキャスト床版 |
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| 鉄道 | 鉄筋コンクリート軌道スラブ プラットフォーム用製品、壁高欄 |
PCまくら木 | |||
| 共同溝類 | 共同溝、電線共同溝、洞道 ケーブルトラフ |
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| 建築 | 鉄筋組立塀 柱・梁 床材・階段・バルコニー版・カーテンウォール |
空洞プレストレストパネル | |||
| その他 | 魚礁ブロック コンクリート防護柵 |
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| 遠心力締固め | 暗きょ類 | 遠心力鉄筋コンクリート管 推進管 |
プレストレストコンクリート管 | ||
| くい類 | 鉄筋コンクリートくい 節くい 鋼管複合くい |
プレストレストコンクリートくい プレストレスト鉄筋コンクリートくい |
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| ポール類 | 照明用化粧ポール | プレストレストコンクリートポール | |||
| マンホール側塊 | マンホール側塊 | ||||
| ロール転圧締固め | 暗きょ類 | 遠心力鉄筋コンクリート管 推進管 |
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| マンホール側塊 | マンホール側塊 | プレストレストコンクリート管 | |||
| 高温高圧蒸気養生 | 軽量気泡コンクリートパネル(ALC) | ||||
※この表は主な組み合わせを表す。
下水道、用排水路、道路(歩行者、自転車などの車両用)などの構成部材【暗きょ類(あんきょるい)】です。
コンクリート管の長さ方向にPC鋼材または鉄筋を配置し、管の円周方向にはPC鋼材を緊張しながら巻き付けてプレストレスを導入した、きわめて剛性の高いコンクリート管です。
遠心力鉄筋コンクリート管を、開削することなく、地中を推進させて管路とする非開削工法に用いる製品です。
アーチ形をしたプレキャストコンクリート製品で、下水道用、排水路用、地下河川用、地下道用及び共同溝用等多方面に利用することができます。このアーチの形状は、建造物として非常に合理的な形状をしており、構
地下鉄、道路、下水道などを作るための「シールド工法」には、シールドセグメントというコンクリート製品が使われています。鋼鉄の筒の中に掘削する機械を納め、周囲の土砂の崩壊を防ぎながら、前面の土を回転するカッターで少しずつ削り取っては、その分油圧ジャッキによって前進し、後方に円周を分割した形状のシールドセグメントを組み立てて、トンネルを築造していく工法で使う製品です。舗装・境界ブロック類は、道路の舗装、境界などの構成部材として使われます。
歩道用平板は、コンクリート製品の中では古株で、歩行者の足元が汚れないようにするために、歩道などのコンクリート舗装用として使われてきました。最近ではコンクリートをポーラス(多孔質)にして、雨水などが空隙部
歩車道境界ブロックは、歩道と車道を区分するために使用されるブロックで、車などがぶつかっても簡単に外れたりしないように、製品が一定の深さに道路などの地中に埋め込まれています。歩道がある道路では、この
地先境界ブロックは、官民境界(公共用地と民有地の境界)や民民境界(民有地と民有地の境界)などを区分するために使用されます。歩道中の植樹帯の枠として使われていることもあります。
インターロッキングブロックは、西洋における舗石の代替品として発展し、ブロックが車などの荷重によって沈下しようとすると、ブロックとブロックとの隙間(目地)に密に充てんした硬い砂粒のかさ(体積)が増え、局所ブロックに作用した力が隣接したブロックに分散され、車や人の通行に耐えるようにできています。また、ブロックの表面を着色しているものもあり、歩道、広場、駐車場などのほか、最近では車道にも使われています。道路の側面に設置される路面排水路の構成部材です。
主に雨水を排水するために使われる側溝で単純な形状なので様々な用途に使われています。断面形状がアルファベットのU形をしているので通称「U字溝」と呼ばれています。側溝の上を人が通ることができるように、このU字溝用のふたも製造されています。
側溝にふたをかけた際に、ふた面と道路面が同じ高さになるよう、側溝本体にふたを落とし込めるよう工夫された側溝です。
道路や地面の勾配と異なる導水勾配を持たせたい場合に使う側溝で、道路勾配に合わせて設置した自由勾配側溝の底部に、必要な導水勾配が取れるように現場打ちのコンクリートを打設して使用します。用排水路・河川・港湾などの護岸、道路、宅地造成などの土留め壁の構成部材です。
各種構造物の基礎くいの構成部材です。
コンクリートくいは、コンクリートパイルとも呼ばれ、建物の基礎や橋の橋台、橋脚などの基礎に用いられており、建物や橋が倒壊しないよう、地下でしっかりと構造物を支えるのがコンクリートくいです。
鋼管とコンクリートの複合くいで、SCくいとも言われています。外郭鋼管の中にコンクリートを注入し、遠心力成型で製造される鋼管とコンクリートが一体化されたくいで、大きな曲げモーメントが作用する場合などに使用されます。 マンホールは一般的に、下水道、電気通信などの点検孔をさし、地下に埋められた管の方向・勾配・管径の変化する箇所に、管内の点検・清掃や管きょ内の換気の目的のために設置されています。
田畑の整備、農地造成における用排水路の構成部材です。
主に農業用水や排水に使われる水路用の製品で、川などの水源から離れた場所に引くために人工的に造られた水路が用水路です。フリューム(U形フリューム)は、雨といのような形をしたU形水路で、主に農業用水路に使われます。
送電、通信など各種電線路用ポールです。
主に照明塔として使用されるコンクリートポールです。街路や公園の景観と美観保全地域用として使用され、デザイン化粧ポールや擬木ポールなどがあります。道路橋の橋げたなど、橋りょうの構成部材です。
防火用水、飲料水などの各種用水を貯蔵・貯留するための施設の構成部材です。
遊水池・調整池は、洪水の原因となる雨水を一時的に貯留して、河川へ少しずつ流す施設です。このような調整池は広い面積を必要とするので、公園や道路の下などの地下に設置されます。
地震時などに消火栓が使用できなくなった場合に備え、地下に消火用の水をためるための耐震性のある鉄筋コンクリート水槽です。
落石、雪崩などから道路などを保護するための施設の構成部材です。ロックシェッドは雪崩や落石、土砂崩れから道路を守るためのトンネルのような防護用の建造物を覆道(ふくどう)と言い、コンクリート製品が使われています。このうち、岩石対策用のものをロックシェッドといいます。
河川堤防ののり面、切土・盛土ののり面の被覆の構成部材です。
張りブロックは、河川の護岸(土提)などの斜面(のり面)を保護するために用いる平板形状のブロックで斜面の勾配が45度よりも緩やかな場合は「張り」、急な場合は「積み」と呼びます。斜面勾配のゆるい場所に用いられるブロックが「張りブロック」です。
鉄筋や金具などで相互を連結して敷設する護岸もしくは、のり面の保護用のコンクリートブロックです。
ブロックマットは河川、水路、調整池等、のり面保護のため、地盤の変形に合わせた追随性、マットでの施工性、緑生、防草などの特徴を持ったのり面被覆ブロックです。河川堤防の、のり面、切土・盛土や駐車場の舗装面の緑化(植栽)のためのブロックです。
緑化ブロックは、先に説明した積みブロックや、のり(法)面被覆ブロックを使って、積極的な緑化ができるように改良したもので、緑化のための土を入れる窪みを持たせたポット形ブロックや、意図的に空隙(くうげき)を持たせたポーラスコンクリートを用いたブロック、シートの上に複数のブロックを張り付けたブロックマットなどがあります。 鉄道のレールを支える部材で、木製であったものをプレストレストコンクリート製にして、長く使えるようにしてあります。現在の鉄道におけるPCまくらぎの使用率は、木製まくらぎや金属製まくらぎなどに比べて最も高くなっています。もともとは木製だったから「枕木」と書きましたが、コンクリート製のものが増えてきたので、「まくらぎ」と表記するようになりました。
ブロック塀や建築の外壁などを構成する部材です。
建物などの主要な構成部材です。
視覚障害者に対して、前方の危険の可能性や歩行方向の変更の必要性を予告すること、または歩行方向を案内することを目的として、靴底や白杖で触れることにより認知させる点状または棒状の突起を有する平板状のブロックです。駅の構内や地下街、横断歩道の近くなどにある、黄色い色のブロックです。
このように数多く使用されているコンクリート製品ですが、日本のセメント使用量の約13%にとどまり、下記のように諸外国と比較すると建設工事におけるプレキャスト化の余地が大きいことが分かります。
<ヨーロッパのプレキャスト化率ix>
| デンマーク | オランダ | フィンランド | オーストリア | アイルランド |
| 49% | 48% | 42% | 33% | 29% |
| スウェーデン | ベルギー | ドイツ | チェコ | |
| 28% | 24% | 24% | 23% |