コンクリートの機能を向上させる化学混和剤
—高性能AE減水剤—

化学混和剤は,コンクリートを製造する際に添加する材料の一つで広く一般に使用されています。化学混和剤には用途に応じて様々な種類1)があり,コンクリートの施工性を高め,強度や耐久性を改善するなどの効果があります。その中でも高性能AE減水剤は減水性能が高く,良好なスランプ保持性能を有することを特徴とする化学混和剤です。ここでは高性能AE減水剤について紹介します。

執筆者:情報コミュニケーション委員会 委員
金井健一(竹本油脂株式会社)

※化学混和剤の概要については,「月刊コンクリート技術2015年12月号」もご参照ください。


1.高性能AE減水剤とは

コンクリートは図-1のように,セメント,細骨材(砂),粗骨材(砂利),水およびコンクリートに特別の性質を与えるために必要に応じて加える混和材料で構成されています。このうち,混和材料はフライアッシュなどの混和材と,主に水の一部としてごく少量使用される混和剤(本記事では化学混和剤)に分類されます。
高性能AE減水剤は化学混和剤のひとつで,液体の薬剤です。界面活性剤と呼ばれる化学品のひとつであり,水によく溶けるという性質を持っています。コンクリートの製造時にセメント質量の0.5%程度〜数%程度(コンクリート1m3あたり数kg程度)を練混ぜ水に添加し,セメント,骨材と一緒に練り混ぜて使用します。

図-1 コンクリートの構成材料 img
図-1 コンクリートの構成材料

界面活性剤である高性能AE減水剤は,図-2に示すようにコンクリート中でセメント粒子を高い分散力で分散させます。これにより,汎用品であるAE減水剤に比べて高い減水率を得ることができ,コンクリートの単位水量低減に有効です。このような高い減水性を有することから,流動性の高い,施工性の良好な高強度コンクリートや高流動コンクリートの製造に適しています。

図-2 セメント粒子の分散状態と減水性2)
  図-2 セメント粒子の分散状態と減水性 混和剤無添加 img 図-2 セメント粒子の分散状態と減水性 AE減水剤添加 img 図-2 セメント粒子の分散状態と減水性 高性能AE減水剤添加 img
  混和剤無添加 AE減水剤添加 高性能AE減水剤添加
セメントの
分散状態
凝集 ←→ img 分散
減水率 12% 18%
SL18pの
単位水量
の一例
210 185 172

一般に,コンクリートは製造後の経過時間に伴って流動性(スランプ)が低下し施工性が損なわれていきます。一方,高性能AE減水剤を用いたコンクリートは経過時間に伴う流動性の低下が小さいので,生コンクリートを長時間輸送しても打込み時の施工性を確保することが可能です。

現在市販されている高性能AE減水剤の多くは,ポリカルボン酸系化合物という化学成分で構成されています。ポリカルボン酸系化合物は,その化学構造を調整することにより高性能AE減水剤の特性,例えば分散性や流動保持性などを比較的容易に変化させることができます。これより,コンクリートに要求される性能に合わせて,様々な機能・性能を付加したポリカルボン酸系化合物を主成分とする高性能AE減水剤が開発され使用されています。


2.特殊な機能を付与した高性能AE減水剤

(1)収縮低減タイプ
硬化したコンクリートには乾燥に伴って収縮する力が発生しますが,収縮が拘束されるとひび割れが発生します。高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)は,従来の高性能AE減水剤の基本性能に収縮低減性能を付与した化学混和剤です。通常の高性能AE減水剤に対してコンクリートの乾燥収縮を5〜15%程度低減でき,これによりひび割れの少ない耐久的なコンクリート構造物の構築を可能とします。
図-3に示す高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)を用いたコンクリートの乾燥収縮の調査結果3)によると,通常の高性能AE減水剤を使用したコンクリートの乾燥収縮率平均値710×10−6(赤線)に対し,高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)を使用したコンクリートの乾燥収縮率は平均値で616×10−6(青線)と,約100×10−6程度,約13%の収縮低減効果が得られています。

図-3 高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)の収縮低減効果調査結果 img
図-3 高性能AE減水剤(収縮低減タイプ)の収縮低減効果調査結果3)

(2)増粘剤一液タイプ
従来から増粘剤系や粉体系の中・高流動コンクリートはありましたが,高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの粉体や増粘剤を別途計量する必要があり,製造設備などの制約がありました。増粘剤一液タイプの高性能AE減水剤は,従来の高性能AE減水剤の基本性能に材料分離抵抗性を付与した化学混和剤で,中・高流動コンクリートに優れた流動性と材料分離抵抗性をバランスよく付与できます。増粘剤一液タイプの高性能AE減水剤を使用することにより,生コン工場で通常使用している材料および設備を用いて,比較的セメント量の少ない普通強度域の中・高流動コンクリートの製造が可能となりました。この技術は,JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の2019年の改正で普通コンクリートの範疇の呼び強度27〜45の範囲で,スランプフロー管理の配合が追加された事により,一般的に普及することが期待されています。


3.終わりに

高性能AE減水剤が開発されてから30年以上経過した中,コンクリートに求められる性能の高度化・多様化に対応した様々な高性能AE減水剤が上市されてきました。今後も多種多様な高性能AE減水剤,もしくはさらに高機能な混和剤が開発されコンクリートの新技術に役立てられていくことでしょう。

[参考文献]
1)コンクリート用化学混和剤 JIS A 6204
2)コンクリート用化学混和剤協会HP「良いコンクリートをめざして」高性能AE減水剤について
3)齊藤和秀・木之下光男・稲垣順司・井上和政・三井健郎・岩清水隆:ハイブリット高性能AE減水剤を用いた低収縮コンクリートの開発(その4),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),pp.849-850,2008,9

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