コンクリート構造物の環境性能に関する研究委員会

JCI-TC055FS

 
委員会設立主旨

 現在地球上に60億以上の人間が存在し、その社会生活のために膨大な資源・エネルギーを消費している。しかも、大きな人口を抱える国々が今後爆発的に経済は発展することが予想されている。人類の生き残りのためには、地球環境の保全が必須となる。つまり、環境問題を社会経済活動の根幹に据えたシステムの構築が極めて重要となる。これまで、先進諸国では社会経済活動を支えるために膨大な社会資本整備が行われてきたが、発展途上国では今後建設投資が著しく増大する。何れも大きな問題を抱えている。社会資本整備においてコンクリートが果たす役割を改めて述べるまでもないが、コンクリート構造物の建設には膨大な資源が用いられると共に、セメントに起因する地球温暖化ガスCO2の排出総量も少なくない。試算によれば、2020年における世界のセメント推定生産量に基づくCO2排出量は、現在日本が排出しているCO2排出総量13.3億トンの1.4倍に相当する。また、世界で使用される地下資源の約8割近くが建設資材として利用されているとされる。
 一方、1992年における民間も含めた建設投資は80兆円を超えていたが、現在はほぼその6割近くまで落ち込み、まだ底が見えないとされており、建設業界は未曾有の困難な状況に直面している。社会的には、その重要性にもかかわらず完全な斜陽産業と見られている。建設業界は、これまで様々な技術開発を行い幾多の困難な構造物建設において重要な仕事をしてきたが、従来の物差しではその価値を社会的にアピールすることが困難になってきている。つまり、新たな評価基準の構築が必要であると言える。
 さて、地球環境問題が益々その重要性を増している。これは、今後「環境」をあらゆるシステムの中に組み込む必要があることを意味し、建設分野も例外ではあり得ないと思われる。つまり、現在我々が行っている全ての活動を、「環境」といる視点から見直すことが求められる。これをネガティブに捉えるか、ポジティブに促えるかにより大きく方向が異なってくるが、我々の活路はこれをポジティブに捉えることにあると考えられる。つまり、我々の仕事の本質は、地球という生命維持装置の保全・修復にある。そのためには、最低限、建設投資がポジティブな側面が大きいことを環境の観点から評価・説明しうるシステムを構築する必要がある。換言すれば、コンクリート構造物の設計・施工等における環境負荷低減技術の開発と一般化、ならびにこれら要素技術に基づく環境便益を評価することが極めて重要となる。


 
活動計画

 コンクリート構造物の設計・施工等におけるマネジメントを含む環境負荷低減技術の現状について国内外で情報収集を行う。次に、環境負荷低減技術の開発の方向性についての検討を行うと共に、ケーススタディを実施し、技術開発を促進させる方策を整理する。また、環境負荷低減をシステムとして機能させるためのより合理的な環境設計体系の構築を図り、ISO規格としての制定を目指す。



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