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コンクリート工学年次大会'02(つくば)において,電子化技術の導入に取り組んだ電子化部会の活動の記録を紹介します。年次大会の電子化に関するアンケート結果も併せて紹介します。 |
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年次大会への電子化技術の導入 | |
コンクリート年次大会の電子化に関するアンケート結果 | |
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年次大会への電子化技術の導入 丸山 久一 (電子化部会部会長) コンクリート工学,Vol.40,No.10,pp.42-44,2002.10
JCI年次大会における講演者数は年々増加し,札幌大会(2001年)では講演申込が798件,投稿論文数も713編とはじめて700編を超えた。年次論文集は厚く重くなり,会場への持ち運びも不便になりつつあった。一方で,電子媒体の進歩・普及は著しく,CD-ROM,電子メール,URL等は個人ベースでの日常活動で必須のものになっている。このような背景の下で,つくば大会(2002年)の準備会では,実行委員会の中に,年次論文集のCD-ROM化を実施することを目的とした新たな部会(電子化部会)を発足させることにした。大会のほぼ20ヶ月前である。
これまでも,年次論文集の掲載論文は,ワードプロセッサーで作成されたものが,フロッピーディスクとともにJCI事務局に郵送されていたので,論文集のCD-ROM化は比較的容易であると思われた。そこで,部会としては,さらに一歩踏み込んで,論文の投稿も含め,年次大会への参加申込み等の大会運営業務の一部まで電子媒体で行うシステムの構築を検討することとした。既に,2年前には土木学会で,1年前には日本建築学会で年次大会への参加申込から講演梗概集のCD-ROM化に至るまでの電子化のシステムが稼動していた。したがって,JCIの年次大会における電子化システムの構築も,それほど困難ではないとの判断もあった。ただ,JCIの場合には,土木学会や日本建築学会のような梗概集ではなく,論文の査読を伴う論文集で,日程も含めた種々の制約がかけられていた。
部会でもっとも配慮したのは,@従来からの継続(紙面での論文投稿,参加登録,印刷版論文集)も可能とするシステムの構築と,A会員へのシステム変更の周知徹底であった。そのためにまず検討したのは,従来の年次大会における全工程の流れを十分に把握し,電子化による変更点とそれに伴う工程の変化を見極めることであった。実際に各部会が活動を開始する前に,それぞれの部会で生じる変更点を整理し,大会の実行委員会内で生じる混乱を最小限にするために,講演部会をはじめとする他の部会の活動を従来のスケジュールより早く開始してもらうこととした。
会員へ必要な情報を提供することと,新システムへの移行に理解をしてもらうことに,あらゆる機会と媒体を利用することとした。会誌における会告は勿論のこと,JCIのHPでの公告,札幌大会でのPRの他,各委員による口コミも積極的にお願いした。
システムの構築には,電子化部会の委員は勿論のこと,開発計算センターの担当者およびJCIの担当職員からも献身的な尽力を頂いた。ぎりぎりの日程の中で,新システムの試行を行い,システム使用のマニュアルを作成し,さらに,講演部会や査読委員会と共同で,変更される応募要領や執筆要領の内容を確認し,その作成作業を行った。
講演の応募や論文提出等では,従来の日程および方法(紙面で応募,提出)を許容しつつ,電子システムでの応募や提出等を実施したので,ある程度の混乱を覚悟していたが,12月初旬の申込締切りの際には,JCIのWEBによる電子申込みが700件,従来通りの申込みが5件と,電子媒体の利用が圧倒的であった。申込みの件数も,前回の関東での大会(1998年,東京ビックサイト)を上回っていたことから,新システムが会員に受け入れられたものと理解された。
Webによる論文投稿については,使用機種やソフトウェアの違いにより,送付された原稿に文字変換等のトラブルが多少発生した。論文であることから,担当者は,送られた全原稿を紙に出力して,前ページを確認するという手間をかけざるを得なかった。省力化,省資源化,作業時間の短縮という観点からは,今後の検討課題である。
今回導入したシステムは,勿論,今後の年次大会でも使用してゆくものである。このシステムの継続的な修正・維持・運用と本部の行事・業務の電子化を検討する委員会として,JCIは,つくば大会の電子化部会を母体とした「電子情報化委員会」を新たに発足させた。この委員会は,来年度の大会においても業務の一部を支援するとともに,当面は,新たに,以下の課題を検討することとしている。
(1)年次論文集の査読システムの電子化
(2)これまでの年次論文集のデータベース化(文献抄録委員会等と共同)
(3)電子決済の方法
(4)ACIとのリンク
会員の皆様のより一層のご指示をお願いする次第である。
コンクリート工学年次大会の電子化に関するアンケート結果 年次大会2002(つくば)実行委員会 電子化部会 丸山 久一,日比野 誠 コンクリート工学,Vol.40,No.10,pp.53-54,2002.10
2002つくば大会では,論文集のCD-ROM化,およびwebを用いた参加登録,原稿提出を行ないました。今後,更に改善を進めるために,大会会場で会員の皆様のご意見を収集させて頂きました。アンケート調査には128件のご協力を頂きましたので,以下にその内容を整理し,ご報告いたします。
1. CD-ROM版論文集 (1)CD-ROM版論文集の継続に賛成ですか? 「賛成」は約80%に達し,論文集のCD-ROM化はほとんどの参加者に支持されていると考えられる。ただし,「CD-ROM化には賛成であるが,印刷版論文集は必要である」という意見が多かった。
図−1 CD-ROM版論文集の継続に賛成ですか?
(2)CD-ROM版論文集は使いやすかったですか? 「使いにくかった」という回答が26%あり,特に「起動が煩雑である」,「CD-ROMドライブの選択が不明である」といった意見が多く寄せられた。起動方法の簡素化は今後の検討課題である。
図−2 CD-ROM版論文集は使いやすかったですか?
(3)検索機能は使いやすかったですか? 「改善が必要」という回答が44%あった。回答の中に具体的な不具合や改善案は少なかったが,代表的な意見として「検索が遅い」,「キーワードで検索すると同じ論文が著者ごとに表示されて見づらい」などがあった。今後はインストラクションの充実と表示の工夫が必要である。
図−3 検索機能は使いやすかったですか?
2. 参加登録の電子化 (1)web上で行なう参加登録は便利でしたか? 「便利だった」という回答が73%に達した。参加者には概ね好評だったと考えられる。また,参加費の支払方法に関しては様々な意見があった。クレジットカード番号をインターネットで送信することに抵抗感があること,および参加者の立場によって利便性が異なることに由来すると考えられる。
図−4 web上で行なう参加登録は便利でしたか?
図−5 参加費の支払方法
3. 原稿提出の電子化 (1)web上で行なう原稿提出は便利でしたか? 「便利だった」とする回答が78%に上り概ね好評であったと考えられる。ただし,「締切り間際は,回線が混雑するために提出するのに非常に時間がかかった」という意見も寄せられている。」
図−6 web上で行なう原稿提出は便利でしたか?
(2)PDF形式の採用についてはどうでしたか? 今回のCD-ROM版論文集では,@汎用性,Aファイルサイズを低減できる,B内容を変更できないことを考慮してPDF形式を採用した。JCI以外の学協会でも論文集等に採用されており,利用者も増加しているため,アンケート結果でも「PDFでよい」とする意見が86%に達している。
原稿作成時に生じた不都合,トラブルとして以下の回答があった。
- 図中の直線(破線)が細くなった。または消えた
- 図,表が変形した。または移動した。
- 字間,行間が変化した。文字化けが生じた。
- 変換後の原稿が7ページになった。
図−7 PDF形式の採用についてはどうでしたか?
(3)原稿のファイルサイズ制限(700kB)はどうでしたか? 約700編の論文を1枚のCD-ROMに収録するために必要な措置として700kBの制限値を設定した。実際に投稿された論文数は555件でその平均値はおよそ400kBであった。また,「ファイルサイズ低減のために解像度を低く設定し,写真が不鮮明になった」といった意見を考慮し,制限値の緩和を検討する必要がある。
図−8 原稿のファイルサイズ制限(700kB)はどうでしたか?
4. 今後の課題 つくば大会で設置された電子化部会は,本部の電子情報委員会となり,JCI全体の電子情報化を担当していくこととなった。その中で,年次大会関係としては,以下の2点を今後検討する予定である。
(1)ペーパーレス査読システム
著者,事務局,査読者間を郵送によって往復している査読用原稿,査読結果,修正原稿をデータベースサーバで一元管理し,紙面による遣り取りをなくし論文審査の合理化を図る。
(2)論文ファイルのダウンロードと課金システム
協会のファイルサーバから会員が必要な論文ファイルを検索,ダウンロードできるシステムの構築を目指す。あわせて信頼性のある課金システムを構築する。