放射性物質の封じ込めと
コンクリート材料の安全利用調査研究委員会

JCI-TC-124A
 
委員会設立主旨

 東日本大震災での原子力発電所の事故では、原子炉建屋から大量の放射性物質が周辺環境へ放出された。放射性物質のさらなる汚染拡大防止や、放射性物質の影響を受けた建設材料の処理・処分・再利用技術が必要とされている。特に社会基盤に重要な役割を持つコンクリート材料、構造物、ガラなどの汚染度の評価や処理は重要である。また、放射性物質の影響を受けた廃棄物や土壌などの長期に渡る封じ込め処理も重要な課題である。社会的関心も高いこれらの課題へのコンクリート工学の分野での技術開発が求められている。
 本研究では、原子力発電所での事故時およびその後の複合的作用を受ける鉄筋コンクリート部材の損傷度評価と放射性物質の漏洩防止技術、放射性物質の影響を受けたコンクリート材料の汚染の評価方法ならびに除染技術、放射性物質により汚染された廃棄物や土壌等の封じ込めに関するコンクリートの利用技術、低汚染コンクリートガラ、コンクリート材料の再利用技術などを調査検討する。


 
 
活動計画

(1)発電所からの漏洩防止WG
 今回の福島第一原子力発電所の事故において、原子炉建屋や格納容器内部の鉄筋コンクリート部材は、爆風荷重や極めて高い熱的作用を受けた。コンクリートの損傷の程度と性状変化を評価するとともに放射性物質の漏洩との関連を考察する。さらに長期間の熱、放射線照射および残留塩分による塩化物イオンの高温の浸漬状況下におけるコンクリートの物性変化を把握するとともに、損傷した部材における鉄筋の腐食進行を予測する。構造物内の任意の部位における損傷の定量化と中長期的な損傷の進展挙動の評価を踏まえ、冷却水の放射性物質の漏洩を防止するための調査研究を行う。
(2)汚染物質の低減WG
 原子力発電所の事故に伴い放出された放射性セシウム(Cs)により、コンクリート材料・構造物・ガラなどが汚染されている。汚染されたコンクリートの評価方法、取扱方法、再利用方法などについて調査し標準化を行う。また、降雨によりもたらされたCsのコンクリートへの浸透挙動について解析する。Csとコンクリートとの相互作用の状況を考慮し、高圧水洗浄、研削など、適切な除染技術の選択ができるようにする。さらに放射能汚染されたコンクリート構造物やコンクリートガラの安全性評価手法を整備し、あわせて汚染物の減容化に伴い発生する浄化処理物と合わせて、これらの再利用技術指針を作成する。
(3)汚染物質の封じ込めWG
 放射性物質に汚染された廃棄物や土壌、骨材等の封じ込めに関するコンクリートの技術開発として、セシウム含有物質のセメント固化とその耐久性を検討するとともに、数値解析モデルによる評価手法の開発を行う。また、一時的な管理のための中間貯蔵や最終処分における放射性物質の封じ込め施設として、コンクリート構造物による人工バリアの設計・施工方法の確立に資するため、長期封じ込め性能の評価モデルを構築するとともにその適用性を検証する。
(4)再利用技術WG
 すでに除染された低汚染コンクリートガラあるいは廃棄コンクリートガラ、コンクリート材料などを再利用する際に必要となる評価方法を検討する。また、それらの再利用の方法や用途などについて検討し、安全利用に関する提案を行う。


(c)放射性物質の封じ込めとコンクリート材料の安全利用調査研究委員会