日本コンクリート工学会

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2022年1月号

「火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関する研究委員会(JCI-TC193A)」活動概要


はじめに

耐久性向上及び低炭素化に寄与する,国内に豊富に埋蔵するポゾラン反応性を有する火山性堆積物の高度利用に向けて,2019~2021年度の3年間にわたり,「火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関する研究委員会」が設置されました。委員会では,コンクリート用混和材としての利用を中心に火山性堆積物に関して,日本国内外での分布・埋蔵量,それらの物性・化学成分特性などの情報に関する調査を実施するとともに,コンクリート用材料の利用実態,火山性堆積物を利用したコンクリートの特性(流動性・強度発現性・耐久性などの側面から)に関する調査,利用に際して必要となる試験方法に関する調査を行い,簡易で最適な製造方法・利用方法の提案を行うことを目的に,活動を行ってまいりました。
火山性堆積物の有効利用は明治時代より行われており,海水に対する耐久性向上を目的として港湾構造物のコンクリートを中心に火山灰が用いられてきました。また,戦後は北海道における高断熱住宅が軽石を用いたコンクリートブロックにより普及し,同じく軽石を用いた軽量コンクリートによって建築物高層化の実現を可能にしました。その後,日本国内における火山性堆積物のコンクリート分野における高度利用が盛んであるとは言えませんでしたが,2020年3月にJIS A 6209「コンクリート用火山ガラス微粉末」が制定されるなど,様々な研究機関などでその有効活用が再考され始めています。共通サンプルを用いて委員が実施したコンクリート試験の結果によれば,火山性堆積物を用いたコンクリートには,実務でも十分利用可能な施工性,強度特性,耐久性などが備わっているものと考えられました。
本稿では研究委員会の活動の概要を紹介するとともに本年3月に開催するオンラインシンポジウムについてご案内いたします。

※会員専用ページには「増刊コンクリート技術2022年1月号」として,本記事のより詳細な内容(一部結果含む)が掲載されています。そちらもご覧ください。
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委員会活動概要

本委員会では原材料WG,利用WGという2つのWGで活動しました。原材料WGでは,日本国内外での分布・埋蔵量,それらの物性・化学成分特性などの情報に関する調査を実施し,コンクリート用材料としての利用実態,ならびに利用するに際して必要となる試験方法に関する調査を行いました。利用WGでは,世界中の火山性堆積物を骨材もしくは混和材として用いたコンクリートに関する実験データを基に,そのフレッシュ特性,硬化過程の特性,硬化後の特性などについて,産地によらず火山性堆積物の化学組成,鉱物組成,粉末度などの物性がコンクリートに与える影響を調査しました。
また, WG以外でも,JIS A 6209に適合する火山ガラス微粉末について,これまで検討が行われていなかった各種試験が行われており,凝結や断熱温度上昇特性などの新たな知見がシンポジウムで報告される予定です。

火山性堆積物をコンクリート用混和材として使う場合には,粉砕やふるい分けを経た微粉末であることが多いので「火山灰/volcanic ash」と表記されることが多いですが,成因やその化学組成,鉱物組成は様々で,粉末度についても粒度分布,比表面積(ブレーン法およびBET法)などにより評価されています。特にポゾラン反応性を有する非晶質のアルミノケイ酸塩(火山ガラス)以外の不純物が含まれていることも多いと考えられ,その結果として世界各地で検討されるいわゆる「火山灰」の性能および品質は一定の範囲に入りません。また北海道で火山灰もしくは火山灰性土壌と呼ばれる堆積物と鹿児島でシラスと呼ばれる堆積物について,コンクリート用材料としてこれまでに多くの検討がなされていますが,その知見が他の地域の堆積物に適用できるのかどうかははっきりしません。

図-1 北海道北見市留辺蘂町の火山灰(左)と鹿児島県霧島市国分(右)のシラス img
図-1 北海道北見市留辺蘂町の火山灰(左)と鹿児島県霧島市国分(右)のシラス

火山性堆積物に含まれる火山ガラスは,加熱発泡体の原料にもなるため,コンクリート以外の分野におけるデータの蓄積があり,北海道20種類,本州9種類,九州25種類の火山性堆積物に関する化学組成やガラス含有率に関するデータベースが構築されていました。また,1930年代には国内でも海外の火山性堆積物に関する研究がなされており,イタリアのPuzzolana,ドイツのTrass,アメリカ西海岸のTufaなどの分析が報告されていました。2000年以降に発表されたセメント混合材もしくは混和材として検討した論文では,国内3箇所,パプアニューギニア,アメリカ合衆国,チリ,メキシコ,サウジアラビアの火山性堆積物について,セメントに置換しても材齢28日において同等の強度が得られると報告されていました。
これらのうち,海外ではアルミノシリケートの火山ガラス質の中にカルシウム分が9%程度固溶している場合も存在し,このような火山灰の反応は高炉水砕スラグに近いものになると考えられます。これに対し,日本の火山性堆積物のCaO量は概ね1~2%程度であり,日本にはこのような火山性堆積物はほとんどないことがわかりました。報告書では,このような調査結果を整理して報告される予定です。


委員会シンポジウム

このたび,本研究委員会では皆様に参加頂きやすいオンライン形式での下記のシンポジウムを開催いたします。委員会活動の成果をご報告するとともに,火山性堆積物に関する一般論文・報告の発表および国内における火山性堆積物を利用したコンクリートの事例紹介もございます。皆様の身近にも未利用資源である火山性堆積物は埋蔵されていますので,関係各位お誘いの上,ふるってご参加くださいますよう,よろしくお願いいたします。

■火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関するシンポジウム

開催日時:2022年3月14日(月)13:00−17:20
配信方式:ライブ配信(Zoomウェビナー使用予定)
※翌日から1週間の録画の見逃し配信(オンデマンド)も用意します。

プログラム(予定):
第一部
13:00−13:05 開会挨拶 
13:05−15:00 投稿論文に関する研究発表
15:00−15:15 事例提供
(休憩)
第二部
15:30−15:50 委員会報告(1) 「火山性堆積物の概要」 
15:50−16:30 委員会報告(2) 「火山性堆積物の性質・用途・試験方法」
16:30−17:15 委員会報告(3) 「火山性堆積物を用いたコンクリートの特性」
17:15−17:20 閉会挨拶

(内容および時間は、都合により変更することがありますので、あらかじめご了承ください。)

プログラム・申し込み方法などの詳細はこちらをご覧ください。
https://www.jci-net.or.jp/j/events/symposium/index.html

執筆者:友寄篤(東京大学)※1
野口貴文(東京大学)※2
佐伯竜彦(新潟大学)※3
陣内浩(東京工芸大学)※3
渡邉悟士(大成建設)※3

※1 情報コミュニケーション委員会 委員
  火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関する研究委員会 幹事(WG2副査)
※2 火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関する研究委員会 委員長
※3 火山性堆積物のコンクリート用混和材としての高度利用に関する研究委員会 幹事

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