日本コンクリート工学会

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2025年8月号

コンクリートのアカデミックデータベースの整理とAIへの活用に関する研究委員会(JCI-TC232A)活動概要

低炭素社会や少子化などの社会情勢を受け、コンクリート構造物の設計・維持管理の高度化・効率化が求められており、AI・機械学習技術の活用が期待されています。
本研究委員会は、これらの技術を実務へ適用しやすくするための基盤整備を目的に2022年度に設置された「コンクリートのアカデミックデータベースの整理とAIへの活用に関するFS委員会」における調査・検討を経て,2023年に設置されました。2023年度からの活動では,国内外の実験データなどを集約し、コンクリートの耐久性や構造性能に関するデータベースを構築しました。さらに、このデータを活用したAIによる予測モデルや分析事例を示すことで、従来の経験に頼る手法からデータに基づいたアプローチへの転換を促し、実務におけるAI技術の普及を目指しました。
本稿では,FS委員会からの3年間にわたる委員会活動の概要を紹介するとともに,本年9月に開催する委員会の成果報告となるシンポジウムについてご案内いたします。

委員会活動概要
AIによる分析事例
既存のデータベースの調査
本研究委員会で構築したデータベース
構築したデータベースに基づく分析事例
おわりに
シンポジウムに関するご案内

※本記事に記載の情報は記事公開時点のものです。適宜,最新情報をご確認ください。


委員会活動概要

委員会は,表-1に示すメンバーにより活動が行われました。委員会では,大きく,材料関連データベースの活用WG,構造関連データベースの活用WG,画像診断データベースの活用WGの3つのWGに分け,データ整理や事例紹介を行いました。できる限り情報を委員内で共有するため,各WGでの個別活動するのではなく,全体委員会での議論を主な活動としました。

表-1 委員会メンバー
委員長 岡崎 慎一郎(香川大学)
副委員長 浅本 晋吾(埼玉大学)
幹事 上田 尚史(関西大学)
角野 拓真(阿南工業高等専門学校)
車谷 麻緒(茨城大学)
塚越 雅幸(福岡大学)
委員 五十嵐 豪(名古屋大学)
齊藤 隆典(北海道立総合研究機構)
小林 真理(UBE三菱セメント)
田中 豊(港湾空港技術研究所)
党 紀(埼玉大学)
西村 信彦(オリエンタル白石)
三島 直生(国土技術政策総合研究所)
顧問 今本 啓一(東京理科大学)

AIによる分析事例

ここでは,AI・機械学習を用いた事例について現時点で発表されている事例をいくつか調査し,紹介します。

■収縮実験データベースの分析1)
本項では,コンクリートの乾燥収縮に対して,機械学習を援用し,配(調)合および岩種を含めた骨材に関するデータを用いて回帰モデルを構築した事例を紹介します。
この研究で使用されたデータは,全国生コンクリート工業組合連合会が平成20年から24年に収集したもの例えば2)であり,JIS A 1129に基づく100×10×400mmの角柱供試体から脱型後乾燥期間6か月(182日)に測定される乾燥収縮および材料条件である配(調)合および使用材料に関するデータが詳細に得られています。本データの骨材の岩種は,砂岩,硬質砂岩,石灰岩等から構成されています。本検討では,細骨材および粗骨材ともに,砂岩,硬質砂岩,石灰岩のいずれかを使用した1918個のサンプルとしています。その結果,粗骨材に単一の岩種が使用されたサンプルは,砂岩が658個,硬質砂岩が254個,石灰岩が815個,3種類の岩種のうち,2種類以上の岩種を混合して使用されたサンプルは191個となり,細骨材については95%以上のサンプルが砂岩を使用したものとなりました。図-1に乾燥収縮のデータに関する頻度分布を示します。
本検討では,単位水量W,水セメントW/C,骨材の剛性に関連する細骨材および粗骨材の絶乾密度Ds,Dgを採用しました。骨材自体の乾燥収縮の関連パラメータは,骨材中の含水量Δw,および骨材の平均比表面積Sとしました。本検討では,ガウス過程回帰(GPR)アルゴリズムを用い,5分割交差検証でそれらの性能を評価しました。構築したモデルと,土木学会示方書式および鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針・同解説(日本建築学会)に示された予測式3)ついて,実測値と予測値の比較を図-2に示します。構築したモデルは,実測値の増加に対し,予測値も概ね同様の増加傾向を示しており,誤差もほぼ±200μ以内に収まることが確認されています。

図-1 6ヶ月乾燥収縮のデータ内頻度分布 img
図-1 6ヶ月乾燥収縮のデータ内頻度分布1)
図-2 構築した機械学習モデルと既往の評価式における実測値と予測値との比較 img
図-2 構築した機械学習モデルと既往の評価式における実測値と予測値との比較1)

■YOLOと生成AIを活用した橋梁の損傷認識
物体検出手法であるYOLO11を用いて,橋梁点検時に複数の損傷を自動認識する深層学習モデル4)に,生成AIによる画像生成技術を導入した事例を紹介します。損傷検出モデルの精度向上には,教師画像データの確保およびその量と質を担保が必要であり,実世界のデータ分布に近く,多様なデータ生成が可能な拡散モデルを活用し,データセットの強化を図りました。
基盤となるモデルの画像データは,橋梁点検調書から取得しました。収集した損傷データは腐食,ひび割れ,遊離石灰,漏水,剥離の5種類であり,それぞれの枚数の内訳を表-2に示します。このデータを使って構築したモデルをCase1とし,損傷検出精度の基準としました。

表-2 データセットの画像枚数
損傷 訓練用 検証用 テスト用
腐食 659 82 82
ひび割れ 803 100 100
遊離石灰 492 62 62
漏水 438 55 55
剥離 612 77 77

拡散モデルとして,LoRA(Low-Rank Adaptation)を利用し5),大規模生成モデルの基盤の重みを固定しながら,低ランクな補助行列を追加して局所的なパラメータ更新を実現しました。さらに,生成プロセスにおける制御性を高めるため,キャプション管理を組み合わせ,画像の形状や質感を特徴付け,内容の多様性を担保すると同時に,生成画像に対してテキスト情報を付与することで,画像に含まれる特徴や意味をより正確に学習させました。5種類の損傷画像をAIで生成させた一例を図-3に示します。

図-3 生成画像の例 img
図-3 生成画像の例

生成画像の活用を目的として,以下の4ケースでモデルを構築し,検証を行いました。Case2はCase1のモデルをもとに,生成画像を用いてファインチューニングを実施し,モデルの汎化性能向上を図りました。Case3では,生成画像のみを用いてモデルを構築し,その後,実画像である橋梁点検調書の画像によりファインチューニングを行いました。これにより,生成画像のみでも精度を担保できるか検証すると同時に,実画像を追加学習することで精度の向上効果を確認しました。Case4では,実画像と生成画像を1:1で組み合わせたデータセットでモデルを構築し,データの不均衡を解消することで精度を検証しました。これらの4ケースでの損傷種別ごとのMean Average Precision at IoU=0.50(mAP_50)の比較を図-4に示します。実画像だけをデータセットに用いたCase1に比べて,生成データだけのCase2では損傷認識精度は低下しますが,生成データと実データを組み合わせるCase3,4では,検出精度が向上しているため,生成画像を活用する意義が示されたといえます。

図-4 テスト結果の損傷種別mAP_50比較 img
図-4 テスト結果の損傷種別mAP_50比較

既存のデータベースの調査

■圧縮強度のデータベース
カリフォルニア大学機械学習・知能システム研究センターは,コンクリートの圧縮強度データを無償で公開しています6)。このデータセットには,圧縮強度に影響を与える8つの変数の単位量(セメント,高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,水,細骨材,粗骨材,高性能AE減水剤)と材齢が含まれ,計1,030件のデータが収録されています。強度としては,30-40MPaが最も多く,最大強度は82.6MPa,最低強度は2.3MPaと幅広いデータとなっています。本データセットは,ニューラルネットワークによる圧縮強度予測モデルの構築に利用され,機械学習アルゴリズムを用いた回帰モデルによる分析にも適用でき(図-5,当委員会での検討結果),材料の配(調)合設計や品質管理に活用できる基礎データになり得ることを確認いたしました。

図-5 ランダムフォレストおよびLightGBMを用いた圧縮強度の各種パラメータの重要度分析 img
図-5 ランダムフォレストおよびLightGBMを用いた圧縮強度の各種パラメータの重要度分析

■収縮,クリープのデータベースのデータベース
Northwestern大学のBazant教授らは,世界各国のコンクリートの1869種類の収縮実験,1439種類のクリープ実験のデータをまとめ,データベースとして無料で公開しています7)。長期的なデータや,大寸法な供試体のデータは少ないものの,水セメント比(以下,W/C),単位水量(もしくは単位セメント量),体積表面積比,乾燥(載荷)開始材齢,相対湿度,温度など,設計上の予測式に必要な最低限のデータは,各実験データで概ね揃っています。また,日本も含め,実験を実施した国や年代の情報もあり,地域特性や各年代における材料特性の影響などの検討も可能です。本データベースを用いて,土木学会コンクリート標準示方書の予測式と機械学習による予測との比較,各種実験パラメータの重要度分析なども幾つか報告されております8)


本研究委員会で構築したデータベース

■塩化物イオンに関するデータ
1979年から2023年までにコンクリート工学年次論文集(日本コンクリート工学会)に掲載された論文を対象に,室内試験で得られた塩化物イオンの見かけの拡散係数と実効拡散係数に関連する66文献から,見かけの拡散係数では,947データ,実効拡散係数では,470データを収集しました。説明変数は,量的変数として,水結合材比,水セメント比,空気量(以上,単位は%),スランプ値(cm),単位水量,単位総結合材量,単位結合材量(セメント,高炉スラグ微粉末,石膏,シリカフューム,シラス,石灰石微粉末),単位総細骨材量,単位細骨材量(砂利,高炉スラグ細骨材,廃瓦細骨材,亜鉛スラグ,ごみ溶解スラグ等),単位総粗骨材量,単位粗骨材量(石,廃瓦粗骨材等),単位混和剤量,(高性能AE減水剤,AE剤,AE減水剤,空気量調整剤,膨張剤,防錆剤,増粘剤等)(以上,単位はkg/m3),圧縮強度(N/mm2),試験開始時材齢,測定期間(以上,単位は日),質的変数として,セメントの種類(普通,早強,中庸熱,低熱,高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメント,中庸熱ポルトランドセメント,3成分系,エコセメント),養生条件(水中養生,気中養生,封緘養生等),測定方法(電気泳動法,浸漬法,浸漬(乾湿繰返し))です。このデータを利用して,本委員会の成果として各種分析を進めました。

■収縮,炭酸化データ
コンクリート工学年次論文集にこれまで掲載された,乾燥収縮,自己収縮,炭酸化に関連する論文に含まれている実験データの数値を表計算ソフトウェアに入力しました。コンクリート工学年次論文集の検索システムのキーワードとして,乾燥収縮は乾燥収縮,自己収縮は自己収縮,炭酸化は炭酸化で検索をかけて,配(調)合などの情報が掲載された論文を中心に,各実験結果を時系列でまとめました。論文名,著者,発行年のほか,配(調)合として,水(kg/m3),セメント(kg/m3),セメント種類,セメントブレーン(cm2/g),フライアッシュ(kg/m3),フライアッシュブレーン(cm2/g),スラグ(kg/m3),スラグブレーン(cm2/g),シリカフューム(kg/m3),シリカフュームブレーン(cm2/g),炭酸カルシウム微粉末(kg/m3),炭酸カルシウムのブレーン値(cm2/g),細骨材種類,細骨材(kg/m3),細骨材密度(g/cm3),細骨材吸水率(%),粗骨材種類,粗骨材(kg/m3),粗骨材密度(g/cm3),粗骨材吸水率(%)の各項目,養生方法をまとめました。これらに加え,乾燥収縮は,乾燥開始材齢,乾燥温度(℃),乾燥湿度(%),乾燥日数(日),収縮ひずみ,自己収縮は試験温度(℃),材齢(日),収縮ひずみ,炭酸化は,炭酸化開始材齢,炭酸化温度(℃),炭酸化湿度(%),CO2濃度(%),炭酸化日数(日),炭酸化深さ(mm)のデータを収集しました。
データベース化した論文数は,乾燥収縮30本,自己収縮18本,炭酸化16本であり,配(調)合や温湿度,CO2濃度などによって異なる実験シリーズは,乾燥収縮で239種類,自己収縮で229種類,炭酸化で130種類です。時系列のプロット数は,乾燥収縮,自己収縮,炭酸化で,それぞれ5205個,6463個,4058個のデータを収集しました。
このデータベースを利用して,本委員会の成果として各種分析を進めました。

■構造関連データ
コンクリート工学年次論文集にこれまで掲載された,構造に関連する論文に含まれている実験データや解析データを調査しました。調査した論文の多くは,高強度コンクリートや繊維混入コンクリート等の特徴的な実験データが多く,普通コンクリートを使った基礎的な実験データが少なかったため,構造関連に関しては,既往の文献9)を参考にせん断補強筋を有しない棒部材のせん断破壊耐力に関連する実験結果に着目しました。特に海外で掲載された論文を中心に実験結果を整理し,デジタル化しました。デジタル化した情報としては,論文名,著者,発行年の他,実験時最大荷重(N),RC部材断面の幅(mm),RC部材断面の有効高さ(mm),RC部材断面の高さ(mm),RC部材のせん断スパン(mm),RC部材のスパン(mm),せん断スパン比,引張鉄筋の断面積(mm2),引張鉄筋比,コンクリートの圧縮強度(N/mm2),引張鉄筋の降伏点応力(N/mm2)の情報をデータベース化しました。データベース化した実験データは,単純梁形式の205供試体であり,このデータを利用して,本委員会の成果として各種分析を進めました。

■画像に関するデータ
コンクリート工学に関する画像データは,主として構造物に生じたひび割れや破壊の様相に関するものが該当し,各委員もしくは,各委員が所属する組織が独自に収集し保管しているものです。土木分野においては,例えば参考文献4)の掲載サイトにより,学習に用いた画像を一般に公開しています。一方,建築物に関しては,個人や法人が所有する住宅等も含まれており,プライバシーの観点から収集した画像の公開や共有が困難であるため,建築分野の研究者が建築物の倒壊判定モデルの構築を行うのは容易ではありません。土木分野ですでに公開されている画像群を転移学習させるなどの工夫が必要です。


構築したデータベースに基づく分析事例

■塩化物イオンに関するデータベースに基づいた分析
これまで委員会で整理したデータベースを教師データとして,塩化物イオンの拡散係数を回帰する機械学習モデルを構築しました。本事例では,目的変数を塩化物イオンの見かけの拡散係数とし,説明変数を上述した変数群としました。使用したアルゴリズムは,ランダムフォレストおよびXGBoostです。モデルの検証には,ランダムフォレストでは,OOB(Out-of-bag Error)検証を,XGBoostでは5分割交差検証を行いました。なお,一部欠損のある学習データについては,学習時にデータベースから排除しました。また,見かけの拡散係数のうち,異常値とみられるものについても同様に排除しています。
図-6および図-7に,ランダムフォレストおよびXGBoostによる各種説明変数の重要度分析結果のうち,上位10パラメータに関する結果を示します。アルゴリズムによらず,概ね重要なパラメータおよび順位に相違は見られません。また,測定期間は混合セメントの種類,水結合材比,材料の単位量等が重要度の観点から選定されており,従来の知見と概ね同じ傾向にあることを確認しました。

図-6 ランダムフォレストによる各種パラメータの重要度分析 img
図-6 ランダムフォレストによる各種パラメータの重要度分析
図-7 XGBoostによる各種パラメータの重要度分析 img
図-7 XGBoostによる各種パラメータの重要度分析

図-8および図-9に,ランダムフォレストおよびXGBoostにより構築した機械学習モデルを用いて得られた予測値と,実測値の関係を示します。なお,本検討では教師データに用いた説明変数を用いて予測値を算出し,実測値との比較を行っています。両者とも概ね良好な回帰結果を示していますが,特にXGBoostはランダムフォレストと比較して非常に高い精度を有しているように一見思われます。ただし,今回は,学習に用いたデータをそのまま今回のモデルの精度確認にも用いており,学習に用いていない未知のデータに対するモデルの正味の性能を表すものではないことに留意する必要があります。モデルの正味の性能評価には,使用したアルゴリズムに適した検証方法がそれぞれ提案されており,モデル構築の都度,目的に合致した適切な方法で確認する必要があります。

図-8 ランダムフォレストによる予測結果 img
図-8 ランダムフォレストによる予測結果
図-9 XGBoostによる予測結果 img
図-9 XGBoostによる予測結果

■せん断耐力に関するデータベースに基づいた分析
委員会で構築したデータベースを教師データとして,せん断補強筋を有しない単純梁の実験時最大荷重を回帰する機械学習モデルを構築しました。本事例では,目的変数を実験時最大荷重とし,説明変数をRC部材断面の幅,RC部材断面の有効高さ,RC部材のせん断スパン,せん断スパン比,引張鉄筋の断面積,引張鉄筋比,コンクリートの圧縮強度,引張鉄筋の降伏点応力として,ランダムフォレストを用いた回帰モデルを検討しました。回帰モデルの性能を決定づけるハイパーパラメータは,3分割交差検証を行い最適化しました。
図-10に,各種説明変数の重要度分析結果を示す。実験時最大荷重を回帰する上で,せん断スパン比およびRC梁の有効高さの重要度が高くなる傾向が確認できます。また,図-11に,ランダムフォレストを用いて構築した機械学習モデルを用いて得られる実験時最大荷重の予測値と実測値の関係を示します。なお,本検討では教師データに用いた説明変数を用いて予測値を算出し,実測値との比較を行っています。図より,実験時最大荷重が低い範囲については,予測値と実測値は概ね一致することが分かります。一方,実験時最大荷重が300kNを超えたあたりから,予測値は実測値よりも低く回帰される傾向にあります。

図-10 最大荷重時のパラメータの重要度分析結果 img
図-10 最大荷重時のパラメータの重要度分析結果
図-11 最大荷重の実験値と予測値の関係 img
図-11 最大荷重の実験値と予測値の関係

現行のせん断耐力算定式においても,せん断スパン比や有効高さは,非常に重要なパラメータの一つであり,ランダムフォレストを用いて構築した機械学習モデルを用いた場合においても同様に,重要なパラメータであることが示唆されました。これらの結果から,せん断補強筋を有しない棒部材のせん断耐力の算定において機械学習を用いる意義が示されました。


おわりに

コンクリート工学分野におけるAI・機械学習技術の活用促進のため,ビッグデータ基盤の整備と活用方法を本研究委員会で検討しました。さらに,無償で公開されている実験データの分析,コンクリート工学年次論文集で発表された実験データを収集・整理し,データベースの基盤を構築するとともに,整備した実験データをもとにした予測,分析を行いました。
近年では,従来のセメント系材料のみならず,廃ガラス粉を混和したコンクリート10)や,廃タイヤと廃レンガ粉を用いたコンクリートの圧縮強度の予測11)等,現状は主としてコンクリートの機械的性質に関する検討が多くなされており,今後は耐久性に関連する性質についても多く報告がなされることが期待されます。国内においても新材料を混和したコンクリートに関する報告が毎年多くなされていますが,これらの知識を基に新材料開発を効率的に進めるためには,これらの実験データをデータベース化し,各研究者間で共有することが必要であると思われます。
本委員会の成果が,今後活用が期待されるAI・機械学習技術の利用促進をより一層実施するとともに,コンクリート構造物に関する実務での設計や,維持管理体系の高度化の実現への一助となれば幸いです。


シンポジウムに関するご案内

本研究委員会の2年間にわたる調査研究の総括として,以下の日時において報告会を開催することとなりました。ふるってご参加ください。

■コンクリートのアカデミックデータベースの整理とAIへの活用に関するシンポジウム(オンライン形式)

開催日時:2025年9月29日(月)13:00〜17:00
オンライン配信方式:ライブ配信
※ライブ配信終了後1週間の録画見逃し配信(オンデマンド)も用意します。

プログラム(予定):
13:00〜13:10 開会挨拶,趣旨説明,委員会設立経緯 岡崎慎一郎(香川大学)
13:10〜13:50 委員会報告(1):「材料関連データベースの活用WG活動報告および国内外の事例報告」
13:50〜14:30 委員会報告(2):「構造関連データベースの活用WG活動報告および国内外の事例報告」
14:30〜15:10 委員会報告(3):「画像診断データベースの活用WG活動報告および国内外の事例報告」
15:10〜15:20 <休憩>
15:20〜16:30 パネルディスカッション:コンクリート分野におけるAI・機械学習の活用と将来展望
16:30〜16:45 講評・閉会挨拶
(内容および時間は,都合により変更することがありますので,あらかじめご了承ください。

※プログラム・申込方法などの詳細はこちらをご覧ください。
https://www.jci-net.or.jp/j/events/symposium/index.html

[参考文献]
1)岡崎百合子・岡崎慎一郎・浅本晋吾・今本啓一:機械学習を援用したコンクリートの乾燥収縮に対する骨材の影響分析,コンクリート工学論文集,34巻, pp. 37-46,2023
2)全国生コンクリート工業組合連合会技術委員会:(2009).乾燥収縮に関する実態調査結果報告書(平成20年度), 2009
3)日本建築学会:鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説, 2006
4)党紀,・水元大雅・刘佳明,・藤嶋斗南:YOLOを用いた多種類橋梁損傷の同時検出, AI・データサイエンス論文集, Vol.2, Iss.J2, pp.447-456, 2021
5)Edward J. Hu, Yelong Shen, Phillip Wallis, Zeyuan Allen-Zhu, Yuanzhi Li, Shean Wang, Lu Wang, Weizhu Chen: LoRA: Low-Rank Adaptation of Large Language Models, arXiv:2106.09685v2, pp.1-26, 2021.
6)UCI, Center for Machine Learning and Intelligent Systems: Concrete Compressive Strength, UCI Machine Learning Repository, https://archive.ics.uci.edu/dataset/165/concrete+compressive+strength
7)Professor Zdenek P. Bazant Helpful Links: http://www.civil.northwestern.edu/people/bazant/
8)浅本晋吾・岡﨑百合子・岡﨑慎一郎,・全邦釘:コンクリートの収縮・クリープの実験データを活用した機械学習による回帰分析,AI・データサイエンス論文集,1巻,pp.122-131,2020
9)二羽淳一郎:「はり選定試験体」選定理由および実験データの概要,第2回RC構造物のせん断問題に対する解析的研究に関するコロキウム 解析モデル検証用試験体の実データ集,JCI-C6,pp.1-8,1983.10
10)Md. Habibur Rahman Sobuz et al.: Microstructural assessment and supervised machine learning-aided modeling to explore the potential of quartz powder as an alternate binding material in concrete, Case Studies in Construction Materials, Vol.22,p.e04568,2025
11)David Sinkhonde et al.: Ensemble machine learning algorithms for efficient prediction of compressive strength of concrete containing tyre rubber and brick powder, Cleaner Waste Systems, Vol.10, p. 100236, 2025

執筆者:岡崎慎一郎(香川大学)※

※コンクリートのアカデミックデータベースの整理とAIへの活用に関する研究委員会 委員長

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