日本コンクリート工学会

ホーム > コンクリートについて > 月刊コンクリート技術 > 2025年11月号

2025年11月号

コンクリートスラッジの活用や削減に関する取組み

レディーミクストコンクリート工場において発生する排水のうち,アジテータ車などの運搬車,ミキサなどのプラント設備に付着したフレッシュコンクリート・モルタルの洗浄や,工事現場から持ち帰られたコンクリート(戻りコンクリート)の洗浄により発生するものを回収水といいます。コンクリートスラッジとは,主に回収水から骨材を除去したものを指し,懸濁水の状態をスラッジ水,スラッジ水を脱水処理したものをスラッジケーキと呼び,スラッジ水中の固形分をスラッジ固形分と呼びます。スラッジ固形分は,セメントや骨材の微粒子などで構成されています。コンクリートスラッジの処理は,スラッジケーキの状態で廃掃法上の汚泥として扱われ,管理型産業廃棄物の最終処分場に埋立処分されることとなっています。
一方,近年,サーキュラーエコノミーを目指す考え方から,資源の投入量や消費量を抑えながら,ストックを有効活用する経済活動が求められています。ここでは,通常は廃棄物として処理されるコンクリートスラッジを取り上げ,その活用や排出量の削減に関する取組みについて紹介します。

執筆者:情報コミュニケ—ション委員会 委員
石井祐輔 (太平洋セメント株式会社)

※本記事に記載の情報は記事公開時点のものです。適宜,最新情報をご確認ください。


1.はじめに

資源循環社会の構築を目指すため,環境省では「ものの流れ」である物質フロー1)を把握することが重要であるとしています。図-1に2021年度の日本における物質フローを示します。2000年度と比較すると,日本全体としては「入口」である物質投入量および「出口」である最終処分量のいずれも減少し,循環利用量については増加しているため,資源循環が推進されていることが分かります。

図-1 我が国における物質フロー(2021年度) img
図-1 我が国における物質フロー(2021年度)1)

ここで,生コンクリート工場を対象に循環利用について考えます。直近の2024年度における国内の生コンクリートの出荷数量は,約6569万m3です2)。全国生コンクリート工業組合連合会の調査では,生コンクリート出荷量に対する戻りコンクリートの発生率は約2.1%であることから3),年間の戻りコンクリートの発生量は100万m3以上であると試算されます。図-2に,戻りコンクリートの処理方法に関する調査結果を示します4)。これによると,戻りコンクリートを固形化して再資源化する処理方法が最も多く,主に路盤材などの道路舗装の用途に活用されています。しかしながら,近年では再生路盤材の需要・供給バランスの不安定さから,再生骨材コンクリートの利用推進の動きも見られます5),6)。このような背景から,戻りコンクリートの再資源化への要求が高まる中で,コンクリートスラッジをさらに活用することが求められていると考えます。

図-2 戻りコンクリートの処理方法に関する調査結果 img
図-2 戻りコンクリートの処理方法に関する調査結果4)

レディーミクストコンクリート工場におけるコンクリートスラッジの発生と回収のフローは,例えば図-3のようになっています7)。まず,コンクリートやモルタルを含んだ洗浄水から粗骨材と細骨材が回収され,スラッジ水となります。その後,脱水処理を経てスラッジケーキと上澄み水に分けられます。回収された骨材は路盤材などで利用されるほか,回収骨材としてレディーミクストコンクリート中の新しい骨材に一部置換をすることも可能です。また上澄み水は,JIS A 5308に記載される「回収水の品質」を満足することを確認して,レディーミクストコンクリートの練混ぜ水として利用することが可能です。以降は,コンクリートスラッジの活用方法および削減への取組みについて示します。

図-3 レディーミクストコンクリート工場におけるコンクリートスラッジの発生と回収の一例 img
図-3 レディーミクストコンクリート工場におけるコンクリートスラッジの発生と回収の一例7)

2.コンクリートの構成材料としての活用

コンクリートスラッジのコンクリートの構成材料としての活用は,用途毎に主に練混ぜ水と粉体材料に分けられます。(1)練混ぜ水としての活用
コンクリートの練混ぜに用いる水として,JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」では上水道水,上水道水以外の水および回収水が規定されており,スラッジ水は回収水の品質を満足する範囲で使用することが可能です。2024年3月の改正では,単位セメント量に対するスラッジ固形分の質量の割合である「スラッジ固形分率」について,その限度の記載が,”3%を超えてはならない”から,安定剤を用いる場合は”6%以下”と変更され,練混ぜ水としてコンクリートスラッジを活用可能な量が緩和されました(表-1)。スラッジ固形分中のセメント活性度と安定剤の凝結遅延成分のオンライン測定が可能な自動安定化管理システムが開発されることで,コンクリートの品質制御が可能となり,スラッジ水のさらなる活用が推進されています8)

表-1 スラッジ固形分率の限度及びスラッジ固形分の取扱い9)
スラッジ水の使用方法 スラッジ固形分率の限度 スラッジ固形分の取扱い
A方法:安定剤を用いない場合 目標値として1%未満 水の質量に含めてもよい
  目標値として1%以上,3%以下 水の質量に含めないが,容積は配合に含めてもよい
B方法:安定剤を用いる場合 目標値として3%以下 水の質量に含めないが,容積は配合に含めてもよい
目標値として3%を超え,6%以下 容積は配合に含める
(2)粉体材料としての活用
スラッジケーキを乾燥・粉砕処理してスラッジ固形分のみを採取し,コンクリートなどの粉体材料とした検討事例もあります10),11),12)。このうち,乾燥スラッジ中の未水和セメントの含有率が高くなるようスラッジ発生の当日に乾燥処理を行った場合11)に,乾燥スラッジ(再生セメント)のみを用いたモルタルの強度は乾燥スラッジの比表面積と一定の相関があり,比表面積が小さいほど強度は高くなっています(図-4)。これは,比表面積が小さいほど未水和セメントの含有率が高くなるためであると説明されています。また,この乾燥スラッジを結合材の内割20%以上混合したコンクリートが実工事へ適用されており,複数の工事を合わせて延べ10,000m3程度の実績があります12)
図-4 乾燥スラッジの比表面積とモルタル強度の関係 img
図-4 乾燥スラッジの比表面積とモルタル強度の関係11)

3.CO2など,酸性ガスの固定材としての活用

スラッジ固形分の主成分はセメント由来の成分であるため,生成された直後のコンクリートスラッジは強アルカリを示します。この強アルカリを生かす一例として,清掃工場の焼却炉から排出される有害な酸性ガス(主成分:塩化水素)をコンクリートスラッジに吸収させる方法が検討されています13)。また近年では,コンクリートスラッジは温室効果ガスの1つである二酸化炭素を固定する材料としても注目されております。産業で大気中に排出される二酸化炭素を,回収して資源として有効利用する技術をCCU(Carbon Capture and Utilization)といいます。コンクリートスラッジを対象にしたCCU技術に関する検討も多く14),15),16),17),18),このうちコンクリートスラッジから溶出したカルシウムを対象にボイラーの排気ガス中の二酸化炭素を固定して高純度の炭酸カルシウムを生成させた材料があります(表-2)。この材料は,コンクリート混和材としての用途に加え,排煙脱硫剤や紙・塗料・ゴムの添加材など,他産業分野への活用も期待されています。

表-2 コンクリートスラッジから生成される高純度炭酸カルシウムの物性の一例14)
項目 物性値など
粒度 約30〜40μm
白色度 約95%
容積重量 約0.5kg/L
BET比表面積 約5.0m2/g
ブレーン値 約3,000〜4,000cm2/g
全アルカリ 0.05%以下
塩化物イオン 0.005%以下
CaCO3含有率 95%以上

4.クリンカ原料としての活用

コンクリートスラッジをカルシウム源として,クリンカ原料の一部に使用する検討がなされています19)。表-3に焼成に用いた原料構成とクリンカの鉱物組成を示します。ここでの検討範囲では,スラッジの使用により遊離石灰(f-CaO)の減少やMgO含有量の増加によりクリンカ鉱物組成が若干変化するものの,セメントペーストの流動性,凝結時間およびモルタルの圧縮強さへの影響は小さいことが示されています。これより,コンクリートスラッジをクリンカ原料に置換することで,石灰石や珪石が削減できる可能性が考えられます。

表-3 原料構成とクリンカの鉱物組成19)
表-3 原料構成とクリンカの鉱物組成 img

5.コンクリートスラッジの発生量削減の取組み

レディーミクストコンクリート工場における運搬車や設備に付着したフレッシュコンクリート・モルタルの洗浄水は定常的に一定量発生するため,コンクリートスラッジの量は戻りコンクリートの発生量によって大きく左右されると考えられます。2010年に報告された,戻りコンクリートの発生抑制に関する調査結果を図-5に示します20)。図中で示されるコンクリート(A)はアジテータ車で工事現場まで運搬されたコンクリートの一部が工場に戻ったもの,コンクリート(B)は運搬されたコンクリート全量が工場に戻ったものを表していますが,いずれの場合も打込み終了近くで精度良くコンクリートの必要量が把握できていないことが戻りコンクリート発生の主要因と認識されていました。このような実態等を受けて,近年,コンクリートの施工現場では画像認識などによる打込みの管理システム21),22)などの導入が進んでおり,リアルタイムでコンクリートの打込みの必要量を把握することで戻りコンクリートの低減に貢献しています。

図-5 戻りコンクリートが発生する主な原因の認識 img
図-5 戻りコンクリートが発生する主な原因の認識20)

6.まとめ

コンクリートスラッジの活用技術は古くから検討されてきましたが課題も多く,なかなか普及に至っていないものも多いのが現状です。しかしながら,近年のサーキュラーエコノミーの考え方により資源としての重要性が見直されているのではないかと思います。廃棄物であるスラッジはある程度の品質のばらつきが想定されますが,品質管理技術の進歩を上手く取り入れながら,コンクリートスラッジが資源としてさらに循環していくことで,持続可能な社会の形成に貢献していくと考えます。

[参考文献]
1)環境省:令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書,https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r06/pdf.html(2025年10月31日確認)
2)全国生コンクリート工業組合連合会技術委員会:生コンクリート製造業の概要,https://www.zennama.or.jp/3-toukei/gaiyou/(2025年10月31日確認)
3)全国生コンクリート工業組合連合会技術委員会:生コンクリートスラッジの実態に関する調査報告書Ⅲ,2020.3
4)山之内康一郎:レディーミクストコンクリートにおける回収骨材・スラッジ水の活用,コンクリート工学,Vol.61,No.5,pp.484-489,2023.5
5)東京都環境局:再生骨材コンクリートの利用促進,https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/construction_waste/500300a20230525131608590(2025年10月31日確認)
6)環境省:令和6年度 建設廃棄物の再資源化に関する調査・検討業務 報告書,https://www.env.go.jp/content/000314280.pdf(2025年11月7日確認)
7)畑中重光・谷川恭雄:生コンスラッジに関する研究の現状,コンクリート工学,Vol.33,No.6,pp.14-24,1995.6
8)勝部英一・砂田栄治・塚田雄一・新大軌:中国地域発 スラッジ水高度利用の実用化に向けた取組み,コンクリート工学,Vol.58,No.10,pp.828-829,2020.10
9)日本規格協会:JIS A 5308:2024レディーミクストコンクリート
10)佐藤嘉昭・劉嘉銘・清原千鶴・田口茂久:微粉砕乾燥スラッジ(PDS)のコンクリート材料としての用途開発に関する研究,コンクリート工学論文集,第13巻,第1号,pp.63-76,2002.1
11)大川憲・青木真一・閑田徹志・笠井哲郎:戻りコンクリートから製造した低炭素スラッジ再生セメント,コンクリート工学,Vol.59,No.9,pp.801-806,2021.9
12)鹿島建設:環境配慮型コンクリート「エコクリート®R3」、初の大規模適用(プレスリリース),2019.1,https://www.kajima.co.jp/news/press/201901/17a1-j.htm(2025年10月31日確認)
13)大阪産業技術研究所:生コンスラッジの有効活用,—焼却排ガス中の酸性ガス吸収材としての利用—,No.98035,1998,https://orist.jp/technicalsheet/98035.PDF(2025年10月31日確認))
14)佐々木猛・八木利之:エコタンカル®(軽質炭酸カルシウム)とその可能性,セメント・コンクリート,No.900,pp.58-63,2022.2
15)小西正芳:セメント製造のCO2を利用した環境配慮型コンクリート,Journal of Japan Solar Energy Society,Vol.49,No.1,pp.38-44,2023
16)石井祐輔・小松浩平・七尾舞・池田周生・黒川大亮・松浦孝:CCU技術を適用した材料を用いた低炭素型舗装,セメント・コンクリート,No.935,pp.42-48,2025.1
17)杉本裕紀・大川憲・巴史郎・閑田徹志:乾燥スラッジ微粉末の炭酸化が鉱物組成に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.46,No.1,pp.127-132,2024
18)神代泰道・田中寛人・井上裕太:スラッジ起源のCCU粉体を用いた低炭素型のコンクリートに関する実験的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.46,No.1,pp.1369-1374,2024
19)茶林敬司・大田将巳・加藤弘義・新大軌:クリンカー原料に生コンスラッジを用いた低温焼成型セメントの物性評価,セメント・コンクリート論文集,Vol.77,pp.105-111,2023
20)澤本武博・中田善久・十河茂幸・陣内浩:残コン・戻りコンの発生に関する意識調査,コンクリート工学年次論文集,Vol.33,No.1,pp.1913-1918,2011
21)安藤ハザマ:AI(画像認識・文字認識)を利用したコンクリート打設の数量管理・時間管理システムを開発(プレスリリース),2022.6,https://www.ad-hzm.co.jp/info/2022/20220630.php(2025年10月31日確認)
22)西松建設:アプリによるコンクリート打設管理システムを開発 〜現場技術者の負担軽減と残コン・戻りコンの抑制による環境負荷の低減を実現し、来年度に外販も視野〜(プレスリリース),2022.3,https://www.nishimatsu.co.jp/news/2022/post_49.html(2025年10月31日確認)

Copyright © Japan Concrete Institute All Rights Reserved.

トップに戻る