ホーム > コンクリートについて > 月刊コンクリート技術 > 2026年2月号
本報告では,環境配慮型材料としてフライアッシュを用いた中流動コンクリートの配合設計と施工性に関して,室内試験練り,季節別実機試験および実施工モデルを用いた実機試験による検証結果を紹介いたします。
※本記事に記載の情報は記事公開時点のものです。適宜,最新情報をご確認ください。
地球温暖化防止対策として2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた国際的な取り組みが加速しており,建設材料においてもCO2排出量の大幅な削減が求められています。特に,コンクリート分野では,セメントの製造に起因するCO2排出が環境負荷に大きく影響するため,製造工程の見直しや代替材料の活用が不可欠となっています。このような背景から,石炭火力発電による副産物のフライアッシュ(FA)は,球形で微粒子のため,セメントの一部として置換することでボールベアリング効果による流動性の向上,ポゾラン反応による長期的な強度増進により耐久性向上が期待できるとともにCO2排出量が削減できることから環境配慮型材料として注目されています。
一方,施工現場においては,少子高齢化による労働力不足や熟練技能者の減少が深刻化しており,従来のような人手に依存した施工から,施工のしやすさおよび品質確保の両立を図るための効率的な施工方法への転換が求められています。JIS A 5308:20241)では,スランプフローで管理するコンクリートが定義されており,高い流動性を有しながらも材料分離を抑えたコンクリートの現場適用が進んでいます。また,2023年には土木学会から,「コンクリートライブラリー161 締固めを必要とする高流動コンクリートの配合設計・施工指針(案)」(以下,締固めを必要とする指針)2)が刊行され,施工のしやすさの要求に応じた流動性をコンクリートに担保させることの重要性が示され,このような指針類の整備とともに,製造方法などの技術開発も進められています。
本報告では,締固めを必要とする指針における定義にならい,補助的な締固めを必要とする高流動コンクリートを「中流動コンクリート」と称し,フライアッシュを使用したスランプフロー管理の中流動コンクリートにおける配合設計,フレッシュ性状特性および施工性を検証するために実施した実験内容を紹介いたします。
なお,これらの実験の成果は論文として公表されており3),4),本報告ではこれらの論文を参照するとともに,実験で得られた以下の試験結果を紹介いたします。
(1)室内試験
(2)実機試験(3シーズン)
(3)実施工モデルを用いた実機試験
(1)使用材料
後述する実機試験で使用可能な材料を用いて,配合検討のために室内試験練りを行いました。表-1に使用材料を示します。なお,AE剤(AE助剤)については,フライアッシュ用のものを使用せず,試験を実施した生コン工場で通常使用しているロジン系界面活性剤を用いました。
| 種類 | 性能・仕様等 | 記号 |
| セメント | 普通ポルトランドセメント 密度:3.15g/cm3 | N |
| 混和材 | フライアッシュII種 密度:2.25g/cm3 | FA |
| 水 | 工業用水 | W |
| 細骨材 | 砕砂 表乾密度:2.58g/cm3 粗粒率(F.M.):2.80 | S |
| 粗骨材 | 砕石1505・砕石2010表乾密度:2.60g/cm3 実積率:59.8%(2005合成) | G |
| 化学混和剤 | 高性能AE減水剤標準型(ポリカルボン酸エーテル系化合物) | SP |
| AE減水剤標準型高性能タイプ(リグニンスルホン酸化合物とポリカルボン酸エーテル系の複合体) | AES | |
| 増粘剤一液型高性能AE減水剤標準型(ポリカルボン酸エーテル系化合物と増粘性高分子化合物の複合体) | VSP | |
| AE剤(変性ロジン酸化合物系陰イオン界面活性剤) | AE |
表-2 配合一覧(室内試験)4)![]() |
1)単位水量
試験配合の単位水量は,土木学会,日本建築学会などの指針・規準類を参考とし,かつフライアッシュの単位水量の低減効果を考慮し,175kg/m3一定としました。
2)単位粗骨材容積
単位粗骨材容積は,「コンクリートライブラリー136高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012年版])3)」(以下,高流動指針)などを参考とし,製造工場の実績から決定しました。
3)フライアッシュ使用量
試験に用いたフライアッシュについては,環境負荷低減の観点からはセメントの約20%をフライアッシュに内割り置換(フライアッシュセメントB種相当)して使用することが有効ですが,使用する細骨材との組合せによっては粉体量不足による流動性不足や,若材齢における圧縮強度発現の低下も懸念されます。そのため,本試験で用いたフライアッシュのセメント有効係数(K値)0.390を考慮した配合についても検討しました。セメント有効係数とは、混和材を混合したコンクリートの強度や特性を評価するため、ポゾラン反応による強度増進をセメントに換算する係数を示します。
4)化学混和剤
表-2に示す配合のうち,フライアッシュを使用しない配合No.1,4,6では,増粘剤一液型高性能AE減水剤(以下,VSP)を用い,フライアッシュを使用した配合では全て高性能AE減水剤(以下,SP)を使用しました。なお,比較用として,配合No.10ではAE減水剤高機能タイプ(以下,AES)を用いました。
(3)試験方法
室内試験は標準期環境を想定して,雰囲気温度20℃で実施しました。コンクリート試料は,公称能力60Lの試験練りミキサを用いて40Lを2バッチ練り混ぜ,全量で80Lとしました。
各配合とも2バッチ目をミキサから排出してから1バッチ目と練り舟で均一になるように人力で練り混ぜた後,5分静置してから各種試験を実施しました。表-3に室内試験練りの試験項目を示します。
| 試験項目 |
試験方法 |
判定基準 |
練り混ぜ 直後 |
| 5分静置 | |||
| スランプフロー(cm) | JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法) |
50cm±7.5 ※練り直後±5cm目標 |
○ |
| 50cmフロー到達(秒) | 実測値 | ○ | |
| フロー停止時間(秒) | 実測値 | ○ | |
| 材料分離状況 | JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)参照 | 目視 | ○ |
| 空気量(%) | JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法) | 4.5%±1.5 ※練り直後 6.0%±1.0 |
○ |
| 単位容積重量(t/m3) | JIS A 1116(フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法)) | 実測値 | ○ |
| コンクリート温度(℃) | JIS A 1156(フレッシュコンクリートの温度測定方法) | 5℃以上35℃以下 | ○ |
| 室温(℃)/外気湿度(℃RH) | 実測値 | 実測値 | ○ |
| Lフロー(mm)、Lフロ−平均流動速度(mm/s)測定値 | JSCE-F 514(高流動コンクリートのL型フロー試験方法(案)) | 実測値 | ○ |
| U型充填測定値(mm) | JSCE-F 511(高流動コンクリートの充填試験方法(案)) ※障害R2 | 実測値 | ○ |
| 粗骨材沈降測定値(%) | JSCE-F 702-2022(加振を行ったコンクリート中の粗骨材量試験方法(案)) | 実測値 室内試験までに評価基準決定 |
○ |
| 圧縮強度(標準水中養生)N/mm2 | JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) | 実測値より判定 | ○ |
(4)試験結果
表-4に示すとおり,スランプフロー(スランプ)および空気量は全配合で目標値を満足しました。また,LフローとLフロー平均流動速度の関係を図-14)に示します。圧縮強度を図-24)に示します。VSPを使用した配合No.1,No.4ではLフローの流動速度が速く増粘剤の効果が見られませんが,フライアッシュを使用した配合No.2,No.5では,粉体量の増加にともない,流動速度が遅くなる傾向が見られました。
圧縮強度を図-24)に示すとおり,フライアッシュをセメントの内割り置換で使用すると材齢28日の圧縮強度は低下するものの,セメント有効係数(K値)を考慮した配合では,材齢28日で目標強度を満足することができました。
粗骨材沈降試験結果を図-34))に示します。粗骨材残存率(示方配合の単位粗骨材量に対して,締固め後の上層部の粗骨材量の割合を示したもの)では,VSPを使用した配合やフライアッシュの使用量が多くなると粗骨材残存率が大きくなる傾向を示しました。また,Lフロー流動速度が遅くなると粗骨材残存率は大きく,逆に速くなると小さくなっていることから,粗骨材残存率は,コンクリートの粘性と関係があることがわかります。
表-4 スランプフロー,空気量(室内試験)4)


図-1 Lフローと流動速度の関係(室内試験)4)

図-2 圧縮強度(室内試験)4)

図-3 粗骨材残存率(室内試験)4)
室内試験の結果から,粉体系の中流動コンクリートでは,総粉体量が不足する場合,材料の分離傾向が確認されました。文献2)や3)には,図-42)に示す流動性と充填性に必要な締固めの程度の関係が示されており,本試験におけるフライアッシュを用いた中流動コンクリートのスランプフローの範囲は,450〜550mm程度が適正と判断されるため,この範囲の配合で実機試験を実施することとしました。なお,スランプフロー550mm以上の場合でも,必ず不適と判断される訳ではなく,使用材料の変更や配合修正によって流動性と材料分離抵抗性を確保することは可能です。
![]() 図-4 流動性と充填性に必要な締固めの程度の関係2) |
(1)実機試験
季節変動による影響を確認するため,表-2に示すNo.6〜8の3配合を対象として,標準期(目標コンクリート温度20℃),夏期(目標コンクリート温度30℃)および冬期(目標コンクリート温度10℃)を想定した3シーズンの実機試験を行いました。各シーズンの配合は共通で,1配合当たり1.5m3×2バッチの合計3.0m3をトラックアジテータに積み込み,低速回転で撹拌しながら待機させ,練上り直後(0分),練上りから45分,90分および120分経過後(夏期除く)に高速撹拌した試料を用いて各種試験を実施しました。試験項目を表-5に示します。
なお,化学混和剤添加率(量)は,練上りから45分経過後のスランプフローが,JIS A 5308の許容差を満たすように経時変化ロスを考慮して決定しました。
(2)試験結果
図-54)に示すとおり,3シーズンのスランプフローの経時変化は,3シーズンの全配合とも45分経過後で目標値を満足しました。スランプフローの経時変化による低下は同一シーズンで比較すると,No.6に比べてNo.7やNo.8が大きくなっています。これは所定のスランプフローを得るために,No.6の化学混和剤の添加率(量)が,No.7,8の量に比べて1.4〜1.7倍程度と多くなったことで,スランプフローの低下を抑制する効果(保持性)が得られたものと考えられます。また,フライアッシュを用いる場合には,そのボールベアリング効果もスランプフローの低下の抑制に寄与するため,化学混和剤の添加率(量)が極端に少なくならないように配慮する必要があります。
図-64)に示すとおり,配合No.7,No.8では寒冷地での凍結融解の影響を検証するため,45分経過後の空気量が7.0%となるように,また,配合No.6については45分経過後で4.5%となるようにAE剤量を設定しました。その結果,大量にフライアッシュを使用した配合でも,一般コンクリート用のAE剤を使用(添加率を増加)することで,所定の空気量を確保できることが確認できました。
| 試験項目 | 試験方法 | 試験実施区分 | |||
| 3シーズン(標準期・夏期・冬期) 実機試験 |
|||||
| 練り混ぜ直後 | 45分経時 | 90分経時 | 120分経時 | ||
| スランプフロー(cm) | JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 50cmフロー到達(秒) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
|
| フロー停止時間(秒) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
|
| 材料分離状況(目視) | JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)参照 | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 空気量(%) | JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 単位容積重量t/m3 | JIS A 1116(フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法)) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| コンクリート温度(℃) | JIS A 1156(フレッシュコンクリートの温度測定方法) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 室温(℃)/外気湿度(℃RH) | 実測値 | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 推定単位水量(kg/m3) | 高周波加熱法○/重量法▲ | ▲ | ▲ | ▲ | ▲ |
| U型充填試験(mm) | JSCE-F 511(高流動コンクリートの充填試験方法(案)) ※障害R2 | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| Lフロー(mm)、Lフロ−平均流動速度(mm/s)測定値 | JSCE-F 514(高流動コンクリートのL型フロー試験方法(案)) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 粗骨材沈降試験(%) | JSCE-F 702-2022(加振を行ったコンクリート中の粗骨材量試験方法(案)) | ○ | ○ | ○ | ○ (夏期除く) |
| 圧縮強度(標準水中養生)N/mm2 | JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) | ○ (7, 28, 56, 91) |
○ (7, 28, 56, 91) |
○ (7, 28, 56, 91) |
○ (7, 28, 56, 91) |
| 圧縮強度(簡易断熱養生)N/mm2 | JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) JASS 5 T-606(簡易断熱養生供試体による構造体コンクリート強度の推定方法) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |
| 圧縮試験(コア試験体)(1000×1000×100mm)N/mm2 | JIS A 1107(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法) JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |
○ (28, 56, 91) |

図-5 スランプフローの経時変化と混和剤添加率(実機試験)4)

図-6 空気量(実機試験)4)
次に,U型充填試験および粗骨材沈降量試験の結果を図-74)および図-84)に示します。
自己充填性の評価は,高流動指針3)で示される高流動コンクリートの自己充填ランク2の目標値の目安を参考としました。練混ぜ直後における500mmフロー到達時間を図-7に示します。スランプフローの目標範囲は600〜700mmとしましたが,これを下回るスランプフローであっても,充填高さの目標値である300mm以上を3シーズンの全配合で満足しました。500mmフロー到達時間は,目標値を3〜15秒としましたが,夏期の配合No.6が7.0秒と最も遅く,夏期の配合No.7,No.8では目標値と同等あるいは下回りました。これはコンクリートの練上り温度が高くなると高性能減水剤の早期の分散性が向上することが理由と考えられます。一方で,空気量が低下しても500mm到達時間が短くなる傾向が見られました。
図-84)に示すとおり,粗骨材沈降試験では経過時間とともに粗骨材残存率は増加する傾向が見られましたが,VSPを用いた配合ではその傾向が見られませんでした。スランプフローが比較的大きくなった夏期配合では,粗骨材残存率が低くなる傾向は見られたものの,他の試験結果との明確な関係性は認められませんでした。

図-7 充填高さとスランプフローおよび500mm到達時間との関係(実機試験)4)

図-8 粗骨材残存率(実機試験)4)
図-94)に示すとおり,圧縮強度は45分経過後の試料で作成した供試体(3シーズンで標準水中養生および簡易断熱養生),標準期および冬期で1辺が1mの立方模擬体から採取したコア供試体によるもので,配合No.8ではK値を考慮することでシーズンを問わず,配合No.6に近い強度発現を示しています。また,図-104)に示す簡易断熱養生の温度履歴では,どのシーズンも温度上昇量が配合No.6>No.8(K値考慮)>No.7の関係を示し,単位セメント量の多い順に高くなりました。なお,K値を考慮しても配合No.8はNo.6より約2〜3℃温度上昇量が低くなり,その差は温度が低いほど(冬期)顕著でした。

図-9 圧縮強度(実機試験)4)

図-10 簡易断熱養生の温度履歴(実機試験)4)
(1)使用材料
使用材料は,室内試験および実機試験(3シーズン)で用いたものと同一としました。なお,比較配合は生コン工場の標準配合の27-12-20Nを選定し、化学混和剤はリグニンスルホン酸化合物+ポリカルボン酸エーテル系高機能AE減水剤(以下,WR)を使用しました。
室内試験および3シーズンの実機試験の結果から,本試験で対象とした中流動コンクリートや粉体系の普通フロー管理のコンクリートでは,単位粉体量や,細骨材と粗骨材の粒度分布や細粒分などの影響を受けるため,これらを考慮して実施工モデルに最適な配合を選定しました。
(2)配合条件
中流動コンクリートの配合は,室内試験や実機試験(3シーズン)の結果を考慮し,表-6に示す配合(表-2における配合No.8)を基本としました。なお,配合No.8のフレッシュ性状の経時変化として,スランプフローは練混ぜ直後と30〜45分経過後ではあまり変化がないものの,空気量については,60分経過後で1.5〜2.0%程度減少することを確認しました。そのため,練混ぜ直後および打込み時の空気量の目標値を中流動コンクリートで6.0±1.0%,普通コンクリートで4.5±1.0%としました。また,中流動コンクリ−トについては,約50mm程度のスランプフローロスを考慮し,練混ぜ直後の目標値を450〜550mmとしました。
表-6 配合(実施工モデルの実機試験)5)![]() |
(3)試験方法
フレッシュ性状の経時変化の試験は,各試験時間までトラックアジテータで低速回転を保持し,練混ぜ直後,30分経過後,60分経過後の試料と,ポンプ車により圧送し実施工モデル(寸法:横幅3500mm×高さ1000mm×奥行500mm)に打込む直前の最終試料(以下,ポンプ圧送筒先)を用いて行い,これらの試験が完了した後,実施工モデルに打ち込みました。表-7に試験項目を示します。
| 試験項目 | 試験方法 | 試験実施区分 | |||
| 実規模試験 | |||||
| 練り混ぜ直後 | 30分経時 | 60分経時後ポンプ圧送(筒先) | 締固め後 | ||
| 打込み状況動画撮影 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| スランプフロー(cm) | JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 50cmフロー到達(秒) | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| フロー停止時間(秒) | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| 材料分離状況(目視) | JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)参照 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 空気量(%) | JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 単位容積重量(t/m3) | JIS A 1116(フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法)) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| コンクリート温度(℃) | JIS A 1156(フレッシュコンクリートの温度測定方法) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 室温(℃)/外気湿度(℃RH) | 実測値 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 推定単位水量(kg/m3) | 高周波加熱法○/重量法▲ | ▲ | ▲ | ▲ | − |
| Lフロー(mm)、Lフロ−平均流動速度(mm/s)測定値 | JSCE-F 514(高流動コンクリートのL型フロー試験方法(案)) | ○ | ○ | ○ | − |
| 粗骨材沈降試験(%) | JSCE-F 702-2022(加振を行ったコンクリート中の粗骨材量試験方法(案)) | ○ | ○ | ○ | − |
| 加振L型フロー試験(mm) | JSCE-F 514に示される器具を使用。堰き止め版引き上げ後,棒バイブレータで10秒間加振 | ○ | ○ | ○ | − |
| 加振L型フロー測定(mm)※粗骨材残存率% | 上記L型フロー測定後,先端部から試料を2L採取し,以降はJSCE-F 702-2022に準拠 | ○ | ○ | ○ | − |
| 圧縮強度(標準水中養生)N/mm2 | JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) | ○(7, 28, 56, 91) | − | ||
| 圧縮強度(簡易断熱養生)N/mm2 | JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) JASS 5 T-606(簡易断熱養生供試体による構造体コンクリート強度の推定方法) | − | − | ○ (28, 56, 91) |
− |
| 圧縮試験(コア試験体)(1000×1000×100mm)N/mm2 | JIS A 1107(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法)JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) | − | − | 模擬体より採取○(28, 91) | |
| 気泡間隔係数(μm) | 気泡の大きさと分布を自動的に認識できる装置を用いて気泡間隔係数の評価に必要なデータ収集を行い,ASTM C 457に示されているリニアトラバース法に従った | 模擬体より採取○ | |||
| 凍結融解抵抗性(%) | 模擬体より10×10×40cmの試験体を採取し,JIS A 1127に示された方法を実施した。 | 模擬体より採取○ | |||
また,実施工モデルの形状および配筋条件を写真-25),図-155)に示します。

写真-2 実施工モデル型枠5)
(形状寸法:高さ1000mm×奥行500mm×延長3500mm)

図-15 実施工モデルの配筋5)
(4)試験結果
中流動コンクリートおよび普通コンクリートの各種フレッシュ性状は図-115),図-125)に示すとおり,スランプ,スランプフローおよび空気量の全てで所定の品質を満足しました。
1)フレッシュ性状
中流動コンクリートのスランプフローは,30分経過後で約100mm程度低下し,圧送後も同程度でしたが,締固め後の試料は練混ぜ直後と同程度まで回復しました。また,L型フローおよび加振L型フローがともに30分経過後で50mm程度低下しましたが,圧送筒先では,練混ぜ直後と同程度でした(図-115))。これは,ポンプ車による圧送距離が10m程度と短く,一般的なスランプフローの低下ではなく,圧送による撹拌効果により粘性が低下したことが原因だと考えられます。普通コンクリートでは,いずれの試験結果(図-125))とも時間経過による明確な変化は認められず,締固め後にスランプがわずかに大きくなった程度でした。
中流動コンクリートの空気量は30分経過後でもほとんど変化がなかったものの,圧送筒先および締固め後では,4.7〜4.8%に低下しました。これは,表-4に示すとおり,気泡間隔係数が小さいことから粗大な空気泡が脱泡した影響だと考えられます。一方,普通コンクリートでは練混ぜ直後は5.7%程度でしたが, 30分経過後や圧送後筒先で4.9%まで低下し,締固め後では3.6%まで低下しました。
図-135)に示すとおり,経時変化にともなう粗骨材残存率は,普通コンクリートに比べて中流動コンクリートの方が,加振による粗骨材の沈降が大きい結果になりました。加振L型フロー試験と粗骨材沈降試験を比較すると,前者の方が加振の影響が小さいようであり,加振による材料分離抵抗性の評価を行う場合には,後者の方が差異を生じやすいと考えられます。

図-11 中流動コンクリートのフレッシュ性状
(実施工モデルの実機試験)5)

図-12 普通コンクリートのフレッシュ性状
(実施工モデルの実機試験)5)

図-13 粗骨材残存率の経時変化
(実施工モデルの実機試験)5)

写真-1 打込み、締固め状況
(実施工モデルの実機試験)
2)充填性
中流動コンクリート,普通コンクリートともにポンプ車を用いて実施工モデル(型枠内)にコンクリートを打ち込みました。施工状況を写真-1に,その際の打重ね線および締固め位置を図-145)に示します。
![]() 図-14 打重ね状況および締固め位置5) |
中流動コンクリートは流動性が良好であり,棒状バイブレータによる締固めがない状態でも打込み位置の反対側の型枠妻面までコンクリートが流動しました。その後の打込みにおいても上面に若干の流動勾配が生じる程度であり,天端仕上げ後に上面に浮上する空気泡も認められませんでした。中流動コンクリートでは全10工程に要した作業時間が14分10秒だったのに対し,普通コンクリートでは全12工程で16分17秒を要したことから,中流動コンクリートを用いることで天端打上りまでに要する時間が短くなり,省力化を図れることが確認できました。
3)硬化性状
練混ぜ直後, 30分経過後およびポンプ圧送筒先で採取した試料による供試体の圧縮強度(標準水中)を図-165)に,鉛直に採取したコアによる圧縮強度を図-175)に示します。図-165)に示すとおり供試体による圧縮強度は,各段階で大きな差異は認められず,材齢28日および91日において十分な圧縮強度が得られました。
なお,ここでは中流動コンクリートを,ポンプ側から中流動-上流,中流動-中間,中流動-下流と称し,同様に普通コンクリートでは,普通-上流,普通-中間,普通-下流と称します。また,採取した鉛直コアからは下面から上方に向かって①→②→③→④の4本の供試体を作製しました。

図-16 供試体の圧縮強度5)

図-17 コアの圧縮強度5)

写真-3 CTスキャンによる断面画像5)

表-8 気泡間隔係数および耐久性評価5)
写真-35)に示すCTスキャンによる中流動コンクリートコアの断面画像では,上層部近傍に約5〜10mmの空気泡が確認されますが,これは締固めの過不足などが影響していると考えられます。加えて,表-85)に示すとおり,中流動コンクリートの気泡間隔係は324mμ以下であり,十分な微細空気泡が保持されていることから,耐久性指数が90%以上の高い耐凍結融解性能が確認されました。
本実験では,フライアッシュを20%のセメント内割り置換として使用した中流動コンクリートの配合を対象として各種試験により種々の性能検証を行いました。通常のフライアッシュを内割り置換した配合では,材齢28日における普通ポルトランドセメントの単味配合よりも強度低下が生じますが,セメント有効係数K値0.390を考慮することで同等の圧縮強度を確保できることが確認できました。また,汎用品のAE剤を適量で使用することにより,所定の空気量を確保できることが確認できました。
実施工モデルによる実機試験においては,混練ぜ直後からポンプ圧送後までの各段階で所定のフレッシュ性状が確保でき,わずかな振動締固めのみで十分な充填性および短時間での施工が実現できました。
しかし,モデル上方には,加振作業あるいは締固め不足に起因する局所的な空気泡の集合が認められたことから,モデル全体の均質性を確保するためには,過剰な流動抑制、適切な打込み位置、締固め位置(間隔)や加振時間など,対象構造物の形状や配筋に応じた施工方法の最適化が必要です。
一方,中流動コンクリートやスランプフローで管理するコンクリートを普及するためには,生コン工場での標準化を進める必要がありますが,呼び強度27などの粉体量が少ない配合や微粒分が少ない細骨材を使用している生コン工場では,フライアッシュをセメントの内割り置換で使用することで不足する粉体量を補うことができます。また,フライアッシュを用いても普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートと同等の性能が得られることに加え,フライアッシュを用いることで環境配慮型コンクリートが容易に得られることは最大のメリットであると言えます。