日本コンクリート工学会

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Sustainable JCI を目指して

西山峰広

 年初にあたり、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

 あらためて申し上げるまでもなく、日本コンクリート工学会は公益社団法人です。公益に資する団体として優遇される点もありますが、制約もあります。そのひとつが財務三基準です。

  1. 公益目的事業比率:公益目的事業費が法人全体の費用の50%以上であること
  2. 収支相償:公益目的事業に係る収入が同事業に要する適正な費用を超えないと見込まれること
  3. 遊休財産額保有制限:遊休財産額が一年間の公益目的事業費を超えないと見込まれること

 公益目的事業とは、調査研究事業(研究委員会等)、標準化事業(ISO、JIS原案作成等)、国際化事業(海外学協会との協力等)等です。一方、法人全体としては、この他に収益事業と法人の管理運営に係る活動があります。収益事業とは、コンクリート技士・主任技士、コンクリート診断士資格事業等です。年次大会において開催されるテクノプラザも収益事業のひとつです。法人の管理運営に係る活動には、社員総会や理事会等が該当します。

 では、これらの基準がJCIの活動にどう影響を及ぼすのか。

 特に公益目的事業比率50%以上という制約が、公益目的事業と収益事業の支出を縛ることになります。公益目的事業の支出額が少ないと収益事業の支出額も減らさなければなりません。逆に、収益事業費を増やしたいときには、公益目的事業費も増やす必要があります。これらは学会として得られる収入の中で行われなければなりません。

 コロナ禍の中、収益事業である資格事業においては、試験会場費が高騰するなど試験実施に掛かる費用が急増しています。そのため、収益事業費の支出を増やすと、同時に、これよりも多くの公益目的事業費を支出しなければなりません。なお、これらの資格を所持されている方々への研修にはeラーニングが導入されました。初期導入費用は高額でしたが、関係各位のご努力により、現在では経費の効率化が図られつつあります。

 財務三基準を達成しつつ、収益事業で得た利益を公益目的事業に活用し、もってコンクリート工学の発展に寄与するというJCIのシナリオが、収益事業に掛かる費用の増加と、調査研究事業等に対する支出がコロナ禍において抑制されていることにより崩れつつあります。

 以上のことから、収益事業の経費の効率化を図りつつ、公益目的事業である研究委員会等では、承認された予算が確実に消化されることが重要です。私からお願いしたいことは、会員の皆様には調査研究活動をさらに活発に行い、また、講演会・講習会等の普及活動や助成金事業を十分に活用し、特に若手研究者の方々が海外の研究者との交流の機会をさらに増やしていただくことです。

 一方、JCIをSustainableにするための方法が収入側においてもあります。

 上述したとおり、公益目的事業をさらに活発に展開するためには、会費収入や事業収入を増やすことが必要です。つまり、会員数と資格受験者を増やすことです。

 2022年9月30日現在の会員数は、正会員、学生会員および団体会員合わせて6,649名となっています。このうち団体会員数は漸増傾向にある一方で、正会員数は漸減傾向にあります。今後さらに会員数や資格受験者を増やすことにより、JCIの調査研究活動や研究成果の普及活動、人材育成をより活発に展開していくとともに、そのために必要な収入の確保を図りたいと考えています。具体的には以下のような方策が考えられます。

  • 大学を卒業あるいは修了した学生会員の正会員へのスムーズな移行
  • 会員の占める割合が低い20〜30歳代という若い世代への働き掛け
  • 技士・主任技士、診断士資格保持者、取得希望者への最新技術情報の提供と働き掛け
  • 将来の担い手である小中高校生にコンクリートを知ってもらう事業の活発化

 JCIの財政基盤をさらに強固にするという点では、国等が主導する技術開発プロジェクトへの参画による競争的資金の獲得、受託研究の強化など他にもよい方策があるものと思います。会員の皆様からのご意見をお待ち申し上げております。

公益社団法人日本コンクリート工学会
第30代会長
にしやま・みねひろ
(京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授)

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