ホーム > JCIの紹介 > 会長の言葉 > 日本コンクリート工学会歴代会長 > 会長就任挨拶 第32代会長に就任して

野口貴文
現代社会において、世界で最も多く使用され、人類の生活・産業活動を支えている建設材料はコンクリートですが、日本コンクリート工学会(JCI)はこれまで、その学術・技術の発展を支えるとともに、研究・教育を推進するという重要な役割を担ってきました。そのJCIの第32代会長に、前川宏一前会長の後任として選任され、その重責に身の引き締まる思いであります。
コンクリートは、紀元前7,000年頃に誕生したとされ、古代ローマ時代には飛躍的な進歩を遂げて数多くの構造物が造られましたが、中世に姿を消してしまいます。その約1,300年後、水硬性セメントの必要性に迫られて以降、ポルトランドセメントの発明や鉄筋コンクリート構造の開発が続き、様々な技術開発がなされて今日に至っています。日本では、戦後復興期から高度経済成長期にかけて鉄筋コンクリート構造物の建設が加速度的に増加し、セメントおよび生コンクリートの生産量がそれぞれ1997年および1990年度にピークを迎えました。そのような状況下、1961年には「日本ACI」が発足し、1965年にはJCIの前身である「日本コンクリート会議」が設立されました。以降、JCIは右肩上がりに成長を続け、2003年には会員数が8,500名を超えました。21世紀も四半世紀を過ぎました昨年、JCIは設立60周年を迎えました。現在、セメントおよびコンクリートの生産量はピーク時の1/3程度にまで減少してしまっていますが、会員数はピーク時の3/4程度に留まっています。これはとりもなおさず、新設の構造物よりも、手をかける必要のある既設の構造物が増え、JCIの役割やJCI会員の責務も、維持管理に重点が置かれるようになってきていることを示しています。
また、昨今の日本のセメント・コンクリート・建設業界に関しては、建設投資自体は、再開発やインフラ更新、防災需要に支えられ、一定規模を維持していますが、労働者不足、働き方改革による施工能力低下、資材価格高騰による工事遅延・縮小といった問題が浮上しています。これらの問題に対応するため、建設工事のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められ、3Dプリンティング技術の開発や設計・施工・品質管理・検査への人工知能(AI)の導入などが検討されています。また、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー社会構築への対応が世界全体・産業全体で最大のテーマとなっており、低炭素コンクリート、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)、コンクリートの再生・再利用といったGX(グリーントランスフォーメーション)に関する技術開発が精力的に進められています。ただし、周囲を海に囲まれた地震国である日本では、コンクリート構造物の長寿命化・強靭化が今後も重要課題であり続けることは間違いありません。
世界的には今後もセメントおよびコンクリートの生産量は増加する傾向にあり、JCIの国際的な貢献を推進していく必要があります。ACI、fib、RILEM、ACF、KCI、TCIなどとの交流・協力を更に推し進め、JCIの国際的なプレゼンスの更なる向上を図っていくことが重要となります。
課題は山積していますが、会員の皆様と一緒に一つずつ解決の糸口を見出していければ幸いです。今後とも、ご支援・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
公益社団法人日本コンクリート工学会
第32代会長
のぐち・たかふみ
(東京大学教授)